WRAP(元気回復活動プラン)

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WRAP

WRAPとは

「WRAP(ラップ)」とは、Wellness(元気)、Recovery(回復)、Action(行動)、Plan(プラン)の頭文字を取ったものです。
毎日を元気で豊かに生きること、さらに、気分を乱すような状況への気づきを高め、調子が悪くなったときに回復を促す行動プランです。
WRAPは精神的な困難を抱えた人達が健康であり続ける為の知恵や工夫を蓄積して作られたセルフヘルプツール、つまり、自分で作る自分のためのリカバリープランです。
自身も精神障害を持つメアリー・エレン・コープランド氏を中心に精神障害のある人たちによって作られ、現在、世界中で活用されています。
日本ではWRAP研究会が、「元気回復行動プラン」と翻訳しています。

WRAPの行動プラン

WRAPの行動プラン

WRAPでは、次のような行動プランをより具体的な形で作成します。

・元気な状態が維持されるような規則正しい生活習慣を作成する
・不快な気分や行動を把握し、気分が良くなるための行動プランを作成する
・とても気分が悪く、自分自身で物事を決めることができない場合に、他の人に何をして欲しいか予め伝えておき、自分自身が安全でいられるようにする

「このような時にはこうする」と細かく決め、行動のリストや連絡先を記入して、自分だけのプランを作っていきます。
自分で考えるだけでなく周囲の意見をもらうことで、より現実的なものにしていく作業を繰り返します。
このようにWRAPは、各自、自分に合った対処の仕方によって辛い症状を軽減したり、予防したりする実践プランであり、認知行動療法やSSTのような教育的・訓練的要素の強い手法とは大きく異なると言えます。

リカバリーに必要な5つの考え方

リカバリーに必要な5つの考え方

WRAPは、精神障害を持つことにより将来を諦め用心して再発を防ぐことよりも、リスクはあっても希望を持ってチャレンジしていく、という考え方が根底となっています。
このようなチャレンジを本人や支援者が実感できる点が大きな魅力です。
WRAPを作るうえでコープランド氏は、元気で豊かな暮らしを実践している人々に共通する点を抽出しました。
それは、
①希望
②責任を持つこと
③学び
④自分自身の権利擁護
⑤サポート
の5つで、これらがリカバリーにとって必要な要素としてWRAPの考え方の基になっています。

希望

リカバリーへの鍵であり、元気になれる希望がある、目標に向かって前進し達成することができる、将来に対して悲観的にならない、という考え方です。

責任を持つこと

“自分で選択する”という責任を引き受けることで人生の主導権を自分の手に取り戻すことができます。
自分自身が自分自身の専門家であり、健康や生活に対して責任を持つことが重要だ、という考え方です。

学び

知ること、学ぶことで、自分にとって適切な決定をすることができるという考え方です。

自分自身の権利擁護

自分自身を知り、目標を設定し、それに向かって前進する。
そのために、必要としていることを勇気をもって冷静に声にし、人々と対話することで自分の権利を守ることが必要である、という考え方です。

サポート

自分が必要とするサポートを、自ら手を伸ばして得ることだけでなく、お互いがお互いの力になるような関係性を育むことが大切である、という考え方です。

WRAPの実践方法

WRAPの実践方法

WRAPは次のような段階に応じたプランを作成していきます。

元気に役立つ道具箱

元気であるために、または気分の優れない時に元気になるために、これまでやってきたこと、またはできたかもしれないことをリストにします。
これらのリストの内容を「道具(ツール)」として使って自分のWRAPを作っていきます。
(例)音楽を聴く、頓服薬を飲む(調子が悪くなる前に)、人に話を聞いてもらう、など

日常生活の管理プラン

元気を保つために毎日しなければならないことを書き出して、忘れずに毎日実践します。
調子が悪くなった時、“何をしていたら元気だったか”を思い出させるのに役立ちます。
(例)規則正しい生活(食事をきちんと摂る、風呂に入る、テレビを観る)の実践、就労移行の仲間と話をする、タバコを吸って楽しい時間を過ごす、など

引き金とプラン

引き金(=もしそれが起きると気分が悪くなったり、調子を乱すきっかけになったりするような出来事や状況)となる出来事が起きた時にどうするか、のプランを立てます。
(例)睡眠不足の時、人混みの中、など
そして、引き金が起こった時に、これをすれば乗り切れる、と思うことのリストを作る。
(例)睡眠を十分に取る、誰かに相談する、など

注意サインとプラン

外部からのストレスとは関係なく自分の中で起こる変化や兆候(注意サイン)に対し何か行動をしなければならない場合を想定して、自分が気付いている注意サインのリストを作ります。
(例)胃が痛くなる、朝すっきり起きられない、他の人や物音が悪口に聞こえる、など
そして、注意サインに気付いた時、それ以上悪くなるのを防ぐためにすべきことのリストを作ります。
(例)ゆっくり寝る、頓服薬を飲む、今自分の調子が悪いと意識する、など

調子が悪い時のプラン

調子がとても悪く、かなり深刻だ、と思う時の気分や行動のリストを作ります。
(例)嫌なことが頭の中を巡る、眠いのに眠れない、全く眠くならない、イライラして怒鳴ってしまう、など

そして、自分の調子が悪くなってきた時に、毎日することの行動プランを書きます。
(例)いつもの生活パターンを壊さないようにする、主治医に相談する、<日常生活の管理プラン>に挙げたことを行う、など

クライシスプラン

自分のケアの責任を他者に委ねなければならないような緊急の場合(クライシス)に、どのようなことをしてもらいたいか、周囲の人に指示を与えるリストを作ります。

(1)良い状況の時の自分について
(2)誰かに責任を任せなければならない時のサイン

(例)全くしゃべらなくなる、物事を被害妄想的に捉える、など

(3)責任を任せたい人、任せたくない人は誰か、例えば友人、家族、主治医、支援者など最低5名あげておきます。

(これらの人たちに、リスト化してよいか意思確認をしておき、また、加わってほしくない人の名前とその理由を書いておくのも良い方法です)

(4)医療・保健・福祉関係者の連絡先と薬の情報
(5)受けても良い治療と受けたくない治療

処方内容に関する希望や、役に立った代替的な治療、役に立たなかった治療も記しておきます。

(6)自宅・地域でのケア、一時休養プラン

入院が最善でない場合のために、自宅や地域で必要な支援が受けられるよう、地域の社会資源を調べておきます。

(7)入院しても良い病院、したくない病院
(8)他人がしてくれると役に立つこと、逆に余計に気分が悪くなることのリスト

(例)他人からは話しかけて欲しくない、家族から話しかけて欲しい、など

(9)クライシスプランに従わなくて良くなったことを示すサイン

(例)よくしゃべる、冗談を言う、妄想を妄想と認識できる、身の回りのことができる、など

クライシス脱出後のプラン

クライシスを脱した後は、まだ様々な問題が存在しており、性急に元の生活に戻すのは危険です。
したがって、順調な回復のためにこの時期のプランについて、クライシスに陥る前に考えておく必要があります。

・“クライシス脱出後のプラン”を使う状況だと判断するのはどのような時か?
・あらかじめ対応しておくと回復しやすくなること
・責任を取り戻すまでのスケジュール表

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