引きこもり支援は「家から始める」 引きこもりと精神科訪問看護

看護師 山田祥和

「引きこもりから抜け出したい」
家族は「抜け出してほしい」

そう思っていても、いきなり仕事を始める、学校へ行く、デイケアへ通う、b型に行く、それはとても高いハードルです。

長い間家で過ごしている人にとって、外の世界は安心できる場所ではありません。
家の外が戦場で、家が安全基地になっているから、引きこもることが続いてしまうのです。

では、家の外を安全にするか、はたまた、家の居心地を悪くするか、の二択なります。

家の居心地を悪くするのは、逃げ場がなくなってしまうので、そのストレスは測りしれません。

時間はかかるかもしれませんが、家の外を安全にしていく方が現実的です。

しかし、「人が怖い」「声をかけられたらどうしょう」「知っている人に会ったらどうしょう」「予期せぬことが起こったらどうしょう」そんな思いを抱えている人に、「頑張って外へ出よう」とチャレンジしても、うまくいかないことがほとんどです。

そこでまずは、家族以外の信頼できる第三者の存在です。
私は、引きこもり支援の第一歩は訪問看護が相性がいいと思っています。

前置きが長くなりましたが、本日は訪問看護における引きこもり支援について書いていきます。

最初の一歩は、安心できる場所で


引きこもっている人にとって、自宅は唯一安心できる場所であることが少なくありません。

その安心できる場所に、いつも同じ看護師が訪問します。
最初は話せなくても構いません。
挨拶だけの日があってもいいです。
ゲームをしながらでもいいです。
一緒に散歩へ行けるようになるまで、何か月かかるのも当然です。
最初は顔を見せるだけでも十分なのです。

大切なのは、「この人なら大丈夫かもしれない」と思える相手を一人つくることです。信頼できる他者の存在です。

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家族以外の人と関わる練習になる


引きこもりの期間が長くなるほど、人との関わり方が分からなくなってしまいます。
家族とは話せても、それ以外の人とは話せない。
これは珍しいことではありません。

訪問看護師は、医療的処置をする存在だけではありません。
雑談をしたり、一緒にゲームをしたり、好きなことについて話したりしながら、家族以外の人との関係を少しずつ築いていきます。

人間関係には練習が必要です。
いきなり学校や職場で練習するよりも、安心できる看護師との関係から始めるほうが、ずっと成功しやすいと思います。

「社会とつながっている」という感覚を取り戻す


引きこもっていると、「自分は社会から取り残されている」、「誰ともつながっていない」そんな感覚になりやすくなります。

しかし、毎週か隔週か毎月か、決まった時間に訪問看護師が来る。
「今日は訪問の日だ。」
「話を聞いてもらえた。」
「また来週会える。」
それだけでも、社会とのつながりは生まれています。
家から一歩も出ていなくても、人との約束があり、人との関係が続いている。

これは立派な社会参加です。

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訪問看護はゴールではなく、スタート


訪問看護の目的は、一生家で過ごしてもらうことではありません。

その人が安心を取り戻し、散歩へ行けるようになる、コンビニで買い物ができるようになる、市役所で手続きができるようになる、フリースクールやデイケアへ行けるようになる。
そして、アルバイトや就職に挑戦できるようになる

そんな未来へつなげるための土台を作ることだと私は思います。

焦って外へ出すのではなく、安心できる関係を積み重ねた結果として、自然と行動範囲が広がっていくのです。

まずは庭、公園、そしてコンビニ、さらには駅周辺。

一緒にステップアップしていきます。

「まずは看護師」が、その後の人生を変えることもある


私はこれまで、多くの引きこもりの方と関わってきました。

最初は部屋から出てこなかった人が、数か月後には一緒に散歩へ行き、やがて学校や就労につながったケースを何度も見てきました。

もちろん、全員が同じように進むわけではありません。
それでも共通しているのは、最初に安心できる他者との出会いがあったということです。

引きこもり支援は、「外へ出すこと」から始まるのではありません。
安心できる自宅で、安心できる看護師と出会うこと。
そこから人とのつながりを取り戻し、少しずつ社会へ歩き出していく。
私は、その最初の一歩を支える存在が、精神科訪問看護師でありたいと考えています。

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