調子が良くなると薬をやめたくなるのはなぜか?

「もう飲まなくていいのでは」と思ったときに

看護師 山田祥和

本日はお薬の話です。精神科において、薬は切っても切れない関係にあります。


「最近調子がいいので、もう薬はいらない気がします」
「薬を飲み続けている自分が、まだ病気なんだと突きつけられるようでつらいんです」
「一度やめてみて、平気だったらそのままやめようと思っています」
うつ病や双極症、統合失調症などの治療を続けている方からよく聞く言葉です。調子が良くなったときに薬をやめたくなるのは、意志が弱いからでも、治療に不真面目だからでもないかもしれません。

「やめたくなる」のは自然な気持ちかもしれません

まずお伝えしたいのは、薬をやめたいと思うこと自体は、責められるようなことではないということです。長く飲み続けるものだからこそ、疑問や迷いが出てくるのは自然なことです。大切なのは、その気持ちを一人で抱え込んだまま、自己判断で中断してしまわないことです。

なぜ調子が良いときほどやめたくなるのか

背景には、いくつかの気持ちが重なっていることが多いです。
①「良くなった=もう必要ない」と感じてしまう
 症状が落ち着いてくると、薬が効いているから安定しているのか、もう薬なしでも大丈夫なのか、自分では判断がつきにくくなります。調子が良い時期ほど、薬の必要性を実感しづらくなるのです。
②薬を飲むこと自体が、病気を意識させる
 毎日の服薬が「自分は患者である」という感覚と結びついてしまい、飲むたびに気持ちが沈むという方もいます。やめたい気持ちの奥に、病気を認めたくないつらさが隠れていることがあります。
③副作用や飲みにくさの負担が積み重なる
 眠気やだるさ、体重の変化など、日常生活への影響が続くと、「この負担に見合うのだろうか」と感じやすくなります。
④周囲の言葉が迷いを強めることもある
 「まだ飲んでるの」「薬に頼らないほうがいい」といった何気ない言葉が、やめたい気持ちを後押ししてしまうことがあります。悪気のない一言であっても、迷っている時期には強く響いてしまうものです。
⑤飲み忘れても大丈夫だった、という経験が重なる
 うっかり飲み忘れた日に特に変化を感じなかったという経験があると、「なくても平気なのでは」と感じやすくなります。ただ、薬の影響は数日単位で少しずつ現れることもあるため、その日の体調だけでは判断がつきにくい面があります。

自己判断でやめる前に、試せること

薬をどうするかは、必ず主治医と一緒に決めることが大切です。そのうえで、相談の場に持っていきやすくするための工夫があります。
①「やめたい」と思った理由を、具体的に書き出しておく
 副作用がつらいのか、飲み続けること自体に抵抗があるのか、理由によって取れる対応は変わってきます。漠然と「やめたい」と伝えるより、何が負担なのかを整理しておくほうが、相談が進みやすくなります。
②受診の場で言い出しにくいときは、メモを渡す
 診察室では時間も限られ、なかなか本音を切り出せないことがあります。短いメモに書いて渡すだけでも、話のきっかけになります。
③「減らせないか」という相談の形にしてみる
 やめるかどうかの二択ではなく、量や種類を調整できないかという相談であれば、主治医とも話を進めやすくなることがあります。
④調子の記録を残しておく
 睡眠や気分の状態を簡単にメモしておくと、「良くなっている」という感覚を客観的に見直す材料になります。相談する際の材料にもなります。
⑤自分の判断だけで急にやめない
 急に中断すると、体調が大きく崩れることがあります。やめること自体が悪いのではなく、相談せずに急にやめてしまうことがリスクになるという点を、知っておいていただけたらと思います。

家族や周囲にできること

①「飲まないとダメでしょう」と説得しない
 正論で押し切ろうとすると、かえって本音を話してもらえなくなります。まずは、やめたいと思う理由を聞くところから始めるほうが、話が続きやすいです。
②服薬の管理を、必要以上に肩代わりしない
 毎回すべてを管理してしまうと、本人が自分の治療に関わっている感覚が薄れてしまうことがあります。
③受診に同行できるときは、気になる点を一緒に伝える
 本人が言いにくいことを、家族が代わりに伝えられる場合もあります。ただし、本人を差し置いて話を進めないよう注意が必要です。
④迷っている時期を、失敗だと捉えない
 薬をやめたいと口にするようになったこと自体は、悪い変化ではありません。自分の治療について考え始めた時期だと受け止めておくほうが、本人も気持ちを話しやすくなります。
薬との付き合い方に迷いが出るのは、治療が長く続いている証でもあります。どうするのが良いかはその人の状態によって大きく異なり、記事の情報だけで判断できるものではありません。迷ったときは一人で決めてしまわず、主治医や医療機関に率直に相談してみることが、遠回りのようで結局は近道になるかもしれません。

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