ASDの感覚過敏と生活でできる工夫

「気にしすぎ」ではない、感じ方の違いとの付き合い方

看護師 山田祥和


「蛍光灯の光がずっとチカチカして見えて、それだけで疲れてしまいます」
「タグが肌に触れているだけで、一日中気になって集中できません」
「みんなが平気そうにしている音が、私にはうるさくて仕方ないんです」


自閉スペクトラム症(ASD、自閉症スペクトラム障害)のある方からよく聞く言葉です。こうした感じ方の違いは「感覚過敏」と呼ばれ、光や音、肌触り、におい、味など、特定の刺激を人より強く感じ取ってしまう特性のことを指します。これは、わがままでも、気にしすぎでもないかもしれません。

感覚過敏とはどういうものか

感覚過敏は、脳が受け取った感覚情報の処理のされ方が、多数派の人とは異なることで起こると考えられています。同じ音や光を経験していても、感じる強さや不快感の大きさが人によって大きく違う、ということです。逆に、特定の感覚に対してはほとんど反応しない「感覚鈍麻」が同時に見られる方もいます。

なぜ感覚がこんなに過敏に働いてしまうのか

感覚過敏の背景には、いくつかの理由が考えられています。
①脳が感覚情報を「取捨選択」しにくい
 多くの人は、無意識のうちに必要な情報だけを選び取り、それ以外の刺激を背景として処理しています。ASDのある方の場合、この取捨選択がうまく働かず、あらゆる刺激が同じ強さで意識に入ってきてしまうことがあります。
②一つの刺激に意識が向くと、切り替えが難しい
 いったん気になった音や光から意識をそらすことが難しく、その刺激にとらわれ続けてしまうことがあります。周囲が気にならない些細な刺激でも、本人にとっては大きな負担になっている場合があります。
③疲労やストレスが重なると、過敏さが強まりやすい
 体調が良いときはある程度平気な刺激でも、疲れていたり気持ちに余裕がなかったりすると、同じ刺激をより強く、より不快に感じやすくなることがあります。
④複数の刺激が同時に重なると、負担が一気に増える
 人混みの中の話し声、照明、におい、すれ違う人との接触など、いくつもの刺激が同時に押し寄せる場面では、ひとつひとつは我慢できる刺激でも、重なることで一気に耐えがたい負担になることがあります。

生活の中でできる工夫

感覚過敏をすべてなくす必要はありません。刺激をゼロにしようとするより、負担を減らす工夫を積み重ねていくくらいで十分です。
①苦手な刺激を先に把握しておく
 「蛍光灯の光が苦手」「特定の生地の感触が苦手」など、自分がどんな刺激に反応しやすいかを把握しておくと、事前に避けたり対策したりしやすくなります。
②道具の力を借りる
 サングラスや遮光カーテンで光を和らげる、耳栓やイヤーマフで音を減らす、タグのない衣類を選ぶなど、道具を使うことは特別なことではなく、生活を楽にするための工夫のひとつです。
③刺激から離れられる「逃げ場」を用意しておく
 人が多い場所や騒がしい場所に行くときは、途中で静かな場所に移動できる、席を外せるといった「逃げ場」を事前に用意しておくと、安心感につながります。「いつでも離れられる」とわかっているだけで、その場にいられる時間が延びることもあります。
④我慢強さで乗り切ろうとしない
 「これくらい我慢すべき」と無理を重ねると、後からどっと疲れが出てしまうことがあります。早めに刺激を減らす選択をすることは、甘えではありません。
⑤刺激の少ない時間や場所を、意識的につくっておく
 一日のうちに、光や音を最小限にできる時間や場所を確保しておくと、他の場面で受けた刺激の負担をリセットしやすくなります。予定を詰め込みすぎず、あえて何もしない時間を挟むことも、立派な対処のひとつです。

周囲の人にできること

感覚過敏は目に見えにくい特性のため、「大げさ」「気にしすぎ」と受け止められてしまうことがあります。本人にとっては本当に強く感じている刺激であることを前提に、「それはつらいね」とまず受け止める姿勢が助けになります。イヤーマフをつける、席を離れるといった対処を、特別視せず自然な選択として見守ることも、大きな支えになります。反対に、「みんな平気なんだから」と刺激に慣れさせようとする関わりは、本人の負担をかえって大きくしてしまうこともあるため、注意が必要です。
感覚過敏の感じ方は人によってさまざまで、同じASDのある方でも苦手な刺激は一人ひとり違います。同じ環境でも、体調やその日の気分によって感じ方が変わることも珍しくありません。自分に合った工夫を少しずつ見つけていくことが、日々の負担を軽くする手がかりになるかもしれません。

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