「親亡き後」が不安な家族へ 引きこもり支援で大切な「つながり」の力
看護師 山田祥和
先日、家族会に参加する機会がありました。
その中で、家族会の会長さんから聞いたお話が、とてもこころに残りました。
その家族会には、統合失調症の息子さんを持つお母さんが、メンバーとして参加されていたそうです。
息子さんは引きこもりがちで、人との関わりも少ない生活を続けていました。すでにお父さんはお亡くなりになられており、お母さんは常々親亡き後を心配されていたそうです。
しかし、ある日、そのお母さんが突然亡くなられました。
息子さんは、一人になってしまいました。
家族会の会長さんからこのお話を聞きながら、私は考えました。
「長年引きこもっていた方が、一番身近で支えてくれていたお母さんを突然失ったら、その後の生活はどうなるのだろう」
食事は?病院は?生活に必要な手続きは?
体調を崩したとき、誰かに相談できるのか。
これから一人で暮らしていけるのか。
ご家族にとって、「自分がいなくなった後、この子はどうなるのだろう」という親亡き後の不安は、とても大きなものだと思います。
実際訪問看護の現場でも、親亡き後問題はよく聞かれる話です。
そんな息子さんには、兄弟も親族もいなく、頼れる友人もいませんでした。
しかし、唯一繋がっていた場所がありました。
それは、就労継続支援B型の事業所とのつながりでした。
お母さんが亡くなった後、B型事業所の職員さんたちは息子さんのことを心配し、自宅まで様子を見に行ったそうです。
そして約1か月間、職員さんたちが協力しながら食事を届け、息子さんの生活を支え続けました。
その後、息子さんはグループホームにつながることができました。
現在は、グループホームで生活しながら、以前からつながっていたB型事業所にも通っているそうです。
このお話を聞いて、親亡き後に大切なのは、何でも一人でできるようになることだけではないのだと感じました。
もちろん、生活に必要な力を身につけることも大切です。
しかし、それと同じくらい大切なのは、困ったときに気にかけてくれる人、相談できる人、支えてくれる人とつながっていることです。
会長さんも言っていました。
「誰でもいいから人とつながっていればいい!」
「そうすればみなさんが心配しているようなこと(親亡き後)にはならない」
「誰かが助けてくれる」
親亡き後を考えるのなら、親御さんが元気なうちに、本人が安心して関われる人・場所とつながっておくことだと感じました。
支援というと、「症状を改善すること」や「できることを増やすこと」を考えがちです。
しかし、今回のお話を聞いて、改めて感じました。
つながっていること自体に、大きな意味がある。
何年も大きな変化がなくてもいいし、訪問して少し話をするだけでもいい、B型事業所に行って、職員さんと顔を合わせるだけでもいいです。
そうした関係が続いていれば、何かあったときに、「最近どうしているかな」「何かあったのかな」と気にかけてくれる人がいます。
今回の息子さんも、B型事業所とのつながりがあったからこそ、お母さんが亡くなった後も、完全に一人になることはありませんでした。
そのつながりが息子さんの生活を支え、さらにグループホームという新しいつながりへと広がっていきました。
親亡き後に必要なのは、突然現れる支援ではなく、親御さんが元気なうちから続いているつながりなのだと思います。
私たちが精神科訪問看護を行う中でも、特に引きこもりの方に対しては、すぐに何かを変えようとすることだけが支援ではないと考えています。
「外に出よう」「働こう」そこから始めなくてもいいのです。
家族以外の人が定期的に家に来る。少し話をする。
最初は、それだけでも十分です。
その関係を続けていくことで、いつか、
「この人になら話してもいい」
「困ったときには、この人に相談してみよう」
と思ってもらえるかもしれません。
そして、本人や家族が本当に困ったとき、そのつながりが次の支援につながることがあります。
訪問看護が、親御さんにとっても本人にとっても、「この人とつながっていてよかった」と思える存在になれたらと思います。
さいごに
親御さんが元気なうちから、家族以外の人と少しずつつながっておくことは、親亡き後のためだけではありません。今を家族だけで抱え込まないためにも、大切なことです。
今回家族会に参加して、つながりそのものが支援になることを改めて感じました。
私たち精神科訪問看護も、何か特別なことをする人である前に、
「何かあったときに気づける人」
「困ったときに思い出してもらえる人」
「この人なら頼ってもいいと思ってもらえる人」
そんな「信頼できる一人」になれたらと思っています。
こころいい暮らしとみらいを。
これからも、本人とご家族が孤立しないための「つながり」を大切にしていきます。

