不登校の昼夜逆転、無理に「治そう」とするとこじれる理由 甘えではなく、こころを守るための反応


看護師 山田祥和

生活リズムさえ整えば、また学校に行けるようになるかもしれない――不登校のお子さんを持つご家族から、そう聞かせていただくことがよくあります。たしかに、昼夜逆転した生活を見ていると、なんとかしてあげたいと思うのは自然なことです。しかし実際には、昼夜逆転を無理に直そうとすることが、かえって親子関係をこじらせてしまうケースを、私は何度も見てきました。ゲームとスマホ(SNS)と同じように。

昼夜逆転は「甘え」ではなく、心を守るための反応

夜だけが、安心して過ごせる時間になっている
不登校の状態にあるお子さんにとって、昼間は「学校に行っていない自分」を強く意識させられる時間です。近所の人の目、友人からの連絡、家族の視線。そうしたプレッシャーから逃れられるのが、多くの場合、家族が寝静まった夜の時間なのです。昼夜逆転は、だらしなさや甘えの表れではなく、傷ついた心を守るために、無意識のうちに作り出された生活パターンだと私は捉えています。

無理に起こすことで生まれる新たな摩擦
「朝だから」という理由だけで無理に起こそうとすると、お子さんにとってはただでさえ苦しい状況に、さらに追い詰められるような感覚が加わります。結果として、親子の間に新たな衝突が生まれ、お子さんはますます心を閉ざしてしまうことも少なくありません。昼夜逆転そのものよりも、それを力ずくで直そうとするやり取りの方が、家庭内の空気を悪くしてしまうことがあるのです。

なぜ夜型の生活になってしまうのか
学校がない時間帯だけが自由に使える
昼間は「学校に行くべき時間」という感覚が強く残っているため、罪悪感なく過ごせるのは、学校が完全に終わった夜以降だけ、というお子さんは少なくありません。ゲームや動画に没頭しているように見えても、そこには「今だけは何も考えずにいられる」という、切実な意味が隠れていることがあります。

体内時計は少しずつしかずれない
人の体内時計は、光を浴びる時間帯によって少しずつ調整されています。夜更かしが続くと体内時計も後ろにずれていき、朝はますます起きにくくなります。これは意志の弱さの問題ではなく、体の仕組みとして自然に起こることです。だからこそ、気合いで元に戻すことは難しく、時間をかけて整えていく必要があります。

対人関係に疲れた心を、いったん休ませている面もある
不登校になる背景には、友人関係や先生との関わりに強く疲れてしまった経験が隠れていることも多くあります。人と顔を合わせる可能性が低い夜の時間帯は、そうした緊張から解放される、数少ない時間なのかもしれません。昼夜逆転を単なる生活習慣の乱れとしてではなく、心を回復させるための時間として捉え直すと、見え方が変わってくることがあります。

こじらせないための関わり方

「起こす」より「眠る時間」に目を向ける
朝起きられないことを問題にするより、まずは夜何時に眠りについているかに目を向けてみてください。就寝時刻が少しずつでも早まれば、起床時刻も自然に前にずれてきます。起こす時間を早めることよりも、眠る時間を整えることの方が、体内時計には効果的です。

光を浴びる時間を、無理のない形で作る
カーテンを開ける、ベランダに出る、窓際で過ごす。そうした小さな行動でも、体内時計を整える助けになります。「学校に行くために」ではなく、「少し気持ちよく過ごすために」という理由で誘ってみると、お子さんも受け入れやすくなることがあります。

「治す」ではなく「整える」という発想に変える
昼夜逆転を「一刻も早く治すべき問題」と捉えると、焦りが先に立ち、お子さんとの関わりも苦しいものになりがちです。「今は生活のリズムが少し崩れている時期なんだな」と捉え直し、整えるまでに時間がかかっても構わないという前提で関わる方が、結果的にうまくいくことが多いように感じています。

焦らなくて大丈夫です

昼夜逆転は、不登校というつらい状況の中で、お子さんなりに心のバランスを取ろうとした結果であることが少なくありません。生活リズムが整うことと、学校に行けるようになることは、必ずしも同じタイミングで起こるとは限りません。順番を急がず、まずは家庭の中に安心できる時間を増やすことから始めるといいと思います。それだけでも、少しずつ状況は変わっていきます。

生活リズムを整えることに一生懸命になりすぎて、保護者自身が疲れ切ってしまうことも珍しくありません。お子さんのペースに合わせることと同じくらい、ご家族自身が休める時間を持つことも大切です。

いつも言いますが、ご家族が元気であることが一番です。

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