AIがこころの相談相手にもなる時代!それでも人が必要な理由を考えてみた
看護師 山田祥和
AIの進化は、私たちの生活を大きく変えています。文章を書く、調べ物をする、仕事を効率化するだけでなく、今では気持ちの相談相手としてAIを利用する人も増えてきました。
私もこれまで、AIについて何本か記事を書いてきました。
一年ちょっと前に書いた記事では、「AIは気軽にこころの相談ができる相手になるかもしれない」という内容でした。夜中でも話を聞いてくれますし、否定もせず、自分の考えを整理する手伝いもしてくれる。孤独を感じている人にとって、大きな支えになる可能性を感じていました。
その後、AIは驚くようなスピードで進化していきました。
相談に乗るだけではなく、一緒に考え、新しい視点を与え、専門的な知識まで整理してくれるようになりました。その姿を見て、「こころの相談という仕事も、いつかAIに置き換わるのではないか」と、半年前の記事で危機感を抱きました。
そして最近のAIはもはや一緒に考え、一緒に学ぶパートナーです。私自身、仕事でも勉強でも調べ物でも、毎日のようにAIを活用しています。
そして今日、さらに考えが変わりました。
正直に言うと、「いよいよここまで来たか」と感じています。
文章を書く力も、知識も、相手の気持ちに寄り添うような返答も、本当に自然です。
だからこそ、AIと向き合えば向き合うほど、逆に見えてきたものがあります。
それは、人にしかできないことです。
今日は、そのことについて書いてみたいと思います。
AIは人のこころを支える存在になっていく
AIはこれから、多くの人のこころを支える存在になると思います。
夜中の2時、不安で眠れない人の話を聞いてくれます。
病院へ行く勇気が出ない人が、自分の気持ちを整理する手伝いもしてくれます。
うつ病や不安障害、発達障害、依存症、不登校、引きこもりについての知識が学べます。
さらには、家族や友人には言えない悩みを打ち明けることもできます。
これまで誰にも相談できず、一人で苦しんできた人にとって、AIは大きな救いになるでしょう。
だから私は、「AIか人か」という議論にはあまり意味がないと考えるようになりました。
色々な意見があると思いますが、私は、AIはこれからのメンタルヘルスに欠かせない存在だと思っています。

でも、人は情報だけでは回復しない
毎日のようにAIと対話していると、不思議なことに気づきます。
AIとの会話を終えたあと、私だけかもしれませんが、ふと誰かに会いたくなることがあります。
もちろん、AIとの対話で考えは整理されます。
不安も少し軽くなります。
新しい知識も得られます。
でも、それだけでは満たされない何かが残るのです。
人は、情報だけを求めて生きているわけではないのだと思います。
誰かと笑ったり、同じ時間を過ごしたり、「元気そうだね」と声をかけてもらったり。
そういう何気ない時間が、人の心を少しずつ温めてくれます。
人の脳は、人とのつながりで安心するようにできている
その理由を少し調べました。その理由は脳の仕組みにもあるようです。
安心できる相手と一緒にいると、オキシトシンというホルモンが分泌されます。
オキシトシンは「安心ホルモン」とも呼ばれ、不安を和らげ、人との信頼関係を築きやすくするといわれています。
また、「自分には居場所がある」「誰かが自分を待ってくれている」と感じることは、こころの安定に関わるセロトニンの働きにも良い影響を与えると考えられています。
つまり、人はもともと、人とのつながりの中で安心できるようにできているのです。
AIとの会話で気持ちが軽くなることはあります。
しかし、誰かと握手をしたり、一緒に笑ったり、同じ空間で過ごしたりする体験とは、少し違うものなのだと思います。
人は「誰と過ごしたか」で変わっていく
精神科訪問看護師として仕事をしていると、それを感じる場面がたくさんあります。
利用者さんが後から話してくださるのは、「あのアドバイスが役に立った」ということよりも、「一緒に散歩したのが楽しかった」「コーヒーを飲みながら話した時間が忘れられない」といったことのほうが多いのです。
もちろん、それは訪問看護に限った話ではありません。
家族でも、友人でも、学校の先生でも、職場の同僚でも同じです。
人は、誰かと過ごした時間によって少しずつ変わっていきます。
どんな言葉をかけられたかよりも、「この人は自分のために時間を使ってくれた」という体験が、人のこころには深く残るのではないでしょうか。

AIには孤独を和らげる力がある。でも所属感は育てられない
心理学では、「所属感」は人が生きていくうえで欠かせない欲求の一つだといわれています。
自分を覚えてくれている人がいて、「久しぶり」と声をかけてくれる人がいる。また、困ったときに「大丈夫?」と気にかけてくれる人がいる。
こうした積み重ねが、「ここにいていいんだ」という安心感につながります。
AIは孤独を和らげてくれるでしょう。
相談にも乗ってくれるでしょう。
でも、「誰かとの関係」の中で育まれる所属感は、やはり人と人との間で生まれるものなのではないかと思います。
AIは、人間にしかできないことを教えてくれる存在なのかもしれない
AIのこの進化の速さを目の当たりにして、私は「こころの相談をする仕事は、なくなってしまうかもしれない」と思いました。
でも、毎日のようにAIと対話するようになった今、考えは少し変わりました。
AIは、私の知識を増やしてくれまし、考えを整理してくれる手伝いをしてくれます。
文章を書く力も貸してくれます。
仕事の効率も、驚くほど上げてくれます。
けれど、AIとの対話を終えたあと、少し虚しさを感じることがあります。
それは、人は情報を求めているだけではないからです。
人は人を求めているのだと思います。
だから私は、AIは人間の仕事を奪う存在ではなく、「人間にしかできないことを教えてくれる存在」なのではないか、と考えるようになりました。
AIが進化すればするほど、人のぬくもりや、人と人とのつながりは、これまで以上に価値のあるものになっていく。
そんな未来が、私は少し楽しみでもあります。

