怒りが抑えられないのは性格のせい?

爆発の下に隠れているもの

看護師 山田祥和


怒りは、心の中で最初に生まれる感情ではないと言われています。不安や疲れ、悲しさ、思い通りにならないもどかしさといった感情が先にあって、それが処理しきれなくなったときに、外に向かって出てくる形が怒りなのだ、という見方です。こうした成り立ちから、怒りは二次感情と呼ばれることがあります。
もうひとつ、あまり知られていないことがあります。怒りっぽさは、性格として語られがちですが、医学的には易怒性という症状の名前があり、うつ病の時期にも現れると言われています。落ち込みではなく苛立ちとして出てくるうつもある、ということです。

怒りの下に隠れているもの

本当は困っている、という合図

訪問の場面でも、強い言葉で怒りを向けられることがあります。そういうとき、その方が本当に伝えたかったのは、分かってもらえないつらさだったり、もう限界だという訴えだったりすることが少なくありません。怒りは、困っている状態を知らせる合図の役割を果たしているのかもしれません。

疾患や特性が関わることもある

双極症の気分が上がっている時期には、いつもなら流せることに強く反応してしまうことがあります。発達障害の特性がある方では、予定が急に変わったときや、感覚的に耐えがたい刺激が重なったときに、抑えが利かなくなることもあります。どれも、我慢が足りないという話とは別のところで起きています。本人からすると、怒りたくて怒っているわけではなく、気づいたら怒っていた、という感覚に近いのかもしれません。

なぜ抑えが利かなくなるのか

体の状態で、我慢できる量が変わる

眠れていない日、食事を抜いた日、痛みがある日。こうした日は、同じ出来事に対しても苛立ちが跳ね上がります。心の問題のように見えて、半分は体の問題かもしれません。逆に言えば、体を整えることは怒りへの対処の一部になります。気持ちの持ち方を変えるより、まず眠ることのほうが効く日もあるのです。

気づいたときには、もう動き出している

怒りは、自分で気づいてから大きくなるのではなく、気づく前に体が反応し始めていることが多いものです。「気をつけよう」と思うだけでは間に合わないのは、そのためです。意志が弱いからではありません。

溜めて我慢すると、小さなことで決壊する

ふだん我慢を重ねている方ほど、取るに足らない出来事で爆発してしまい、後から「あんなことで」と自分を責めることになります。決壊したきっかけの大きさと、溜まっていた量は、まったく別のものです。

爆発する前の数分にできること

体のサインを先に見つけておく

怒りが大きくなる前には、肩が上がる、奥歯を噛みしめる、呼吸が浅く速くなる、声が大きくなる、といった変化が出ます。自分はどれが先に出るのかを知っておくと、気持ちより先に体のほうで気づけるようになります。

とにかく、その場をいったん離れる

言い返す前に席を外す。別の部屋に行く。外の空気を吸う。逃げたように感じて気が引けるかもしれませんが、距離を取ることは最も確実な方法です。一度離れてから戻って話すほうが、言いたかったことも伝わります。

一番強い数分のやり過ごし方を、決めておく

怒りの峰は、長くは続かないと言われています。その数分をどう過ごすかを、落ち着いているうちに決めておくと使えます。冷たい水を飲む、手を洗う、決めた数まで数える。何をするかは人それぞれで、効くものがひとつ見つかれば十分です。怒っている最中に新しい方法を試すのは難しいので、決めておくこと自体に意味があります。

眠れていない週は、予定を減らしておく

抑えが利かない日が続くときは、我慢する力を鍛えるより、負荷を下げるほうが現実的です。苛立ちやすい時期だと自分で分かっているなら、人と会う予定を減らしておいてもいいのです。

爆発してしまった後のこと

責めすぎると、次が起きやすくなる

自分を強く責めると、その苦しさがまた新しい苛立ちの種になります。反省と自責は別のもので、必要なのは前者だけかもしれません。

謝るのは関係をやり直すため

言ってしまった言葉を取り消すことはできませんが、やり直すことはできます。何が引き金だったかを後から一緒に確かめておけると、次に同じ場面が来たときの備えになります。なお、物が壊れたり誰かが傷ついたりする事態になっているときだけは、二人のあいだで収めようとせず、早めに外の力を借りてほしいと思います。

家族や周囲にできること

正面から言い返さず、議論を続けない

「正論で対抗しない!」

これにつきます。怒っている時は自分が正義だと思っていますから、いくら間違っていたとしても正論は通じません。怒りの最中に正しさを示そうとすると、火に油を注ぐことになります。その場では内容に立ち入らず、落ち着くのを待つほうが早く収まります。黙って待つことは、相手の言い分を認めたことにはなりません。話し合うべきことは、落ち着いてからのほうがきちんと話せます。

落ち着いているときに話をする

苛立ちが強くなってきたら席を外す、この合言葉が出たら話を中断する。そうした取り決めを穏やかな時間に作っておくと、いざというときに使えます。
怒りを出さない人になることが目標なのではなく、怒りが何を知らせに来ているのかが分かればいい。そう考えてみると、少し気が楽になりませんか。最近いちばん強く苛立った場面を思い出してみたとき、その下には、どんな気持ちが隠れていたでしょうか。

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