季節性うつは秋のうちから備えられる

日が短くなる前に、できることがあります

看護師 山田祥和


九月に入り、夕方の訪問先を出る時間に外がずいぶん暗くなったと感じるようになりました。まだ暑い日も残っていますが、日が落ちるのは確実に早くなっています。この時期、私は毎年少しだけ身構えます。これから数か月かけて、気分の落ち込みを訴える方が静かに増えていくからです。
秋から冬にかけて調子を崩し、春になると戻る。この繰り返しが見られる状態は、季節性うつ、あるいは季節性感情障害や冬季うつと呼ばれています。

秋から冬にかけて気分が沈みやすくなる仕組み

日照時間の変化が、体のリズムに影響する

はっきりした原因はまだ分かっていない部分もありますが、日照時間が短くなることで体内時計の調整がうまくいかなくなることや、気分に関わる脳内の物質の働きが変化することが関係していると考えられています。つまり、気持ちの持ちようの問題ではなく、光の量という環境の変化に体が反応している面があるということです。冬になると気分が落ちる自分を意志の弱さだと感じている方は少なくありませんが、そう捉えなくてよいのかもしれません。

通常のうつ病とは症状の出方が違うことがある

季節性うつでは、眠れなくなるのではなく、むしろ眠りすぎてしまうことが多いといわれています。休日に一日中眠ってしまう、たくさん寝ているのに日中も強い眠気が続く、といった形です。食欲についても、落ちるのではなく増える方向に傾くことがあります。眠れない、食べられないという典型的なうつのイメージと違うため、本人も周囲も不調だと気づきにくくなります。

見過ごされやすい理由

「季節のせい」で片づけられてしまう

寒くなれば誰でも億劫になるものだ、と受け止められてしまうと、相談につながりにくくなります。誰にでもある冬の気だるさと、生活に支障が出るほどの落ち込みは、地続きに見えて程度が違います。仕事や家事が回らなくなる、人と会う気力が湧かない状態が続くのであれば、季節のせいと片づけないほうがよいかもしれません。

始まりが緩やかで、本人も気づきにくい

季節性うつは、ある日突然始まるというより、数週間かけてじわじわと重くなっていくことが多いようです。少しずつ変化するため、本人は不調の最中にいても「いつもこんなものだった気がする」と感じてしまい、変化として捉えにくくなります。

毎年のことだからと、相談の対象から外してしまう

何年か繰り返していると、冬に落ち込むことが自分の性質のように思えてきて、わざわざ相談することではないと感じてしまう方もいます。ですが、毎年決まった時期に同じ変化が起こるということ自体が、季節の影響を受けているという手がかりでもあります。繰り返しているからこそ、対処を組み立てやすい面もあるのです。

秋のうちからできる備え

朝の光を浴びる時間を、先に確保しておく

不調が始まってから生活を変えるのは、なかなか大変です。まだ動ける今のうちに、朝はカーテンを開ける、通勤や買い物の一部を朝の時間に移すなど、光を浴びる機会を生活に組み込んでおくと、冬に入ってからの負担が変わってきます。外に出られない日は、窓際で過ごすだけでも構いません。

冬の予定の量を、あらかじめ減らしておく

秋の元気なうちに冬の予定を詰め込んでしまうと、いざ調子が落ちたときに、こなせない予定ばかりが残ります。年末年始は行事も多い時期です。冬は活動量が落ちる前提で組み立てておくほうが、後から自分を責めずに済みます。

「よく寝ているのに眠い」を、怠けと捉えない

眠っても眠気が取れない状態が続くと、自分に厳しくなりがちです。ですが、これは季節性うつでよく見られる症状のひとつかもしれません。睡眠時間を削って解決しようとするより、まずは症状として捉え直してみてください。

去年の自分の記録を手がかりにする

何月ごろから調子が落ち始め、いつ戻ったか。過去の経過が分かると、今年の見通しが立てやすくなります。手帳やスマートフォンに一行残しておくだけでも、来年の自分を助ける材料になります。落ち込みの底が例年どのあたりだったかが分かっていれば、いちばんつらい時期に「これがいつまでも続くわけではない」と思い出す手がかりにもなります。

冬を乗り切るのではなく、冬に合わせて過ごす

寒い時期を気合いで乗り切ろうとすると、うまくいかなかったときの落胆が大きくなります。冬は活動量が落ちるものだと最初から見込んでおいて、その範囲で過ごせれば十分だと考えておくほうが、結果として消耗しにくくなります。無理に例年通りを目指さなくてもいいのです。

家族や周囲にできること

冬の間の期待値を、いったん下げておく

秋から冬にかけて動きが鈍くなることが分かっているなら、その時期は家事の分担を変える、外出の誘いを控えめにするなど、あらかじめ調整しておくと、本人が引け目を感じずに済みます。「去年の冬もこの時期はこうだったね」と共有しておけるだけで、責めるような雰囲気は生まれにくくなります。
季節性うつは、光を用いた治療が選択肢になることもありますが、自己判断で市販の照明器具を使う前に、まずは主治医や医療機関に相談してみてください。落ち込みの程度や背景は人によって異なり、別の要因が隠れていることもあります。冬に調子が落ちること自体は、波があって当然の範囲かもしれません。それでも、来る時期が分かっているのであれば、身構えるのではなく、少し早めに支度をしておくくらいの構え方で十分ではないかと思います。

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