不安症(不安障害)の予期不安との付き合い方

まだ起きていないことへの不安と、どう距離を取るか

看護師 山田祥和


「また同じことが起きたらどうしよう」
「うまくいく保証もないのに、失敗する場面ばかり考えてしまいます」
「まだ何も起きていないのに、朝から気持ちが重いんです」
精神科訪問看護の現場で、不安症(不安障害)のある方からよく聞く言葉です。こうした「まだ起きていないことへの強い不安」は、予期不安と呼ばれています。これは考えすぎな性格だからというわけではありません。

本日は、私がこうした予期不安に悩む方たちと関わってきた経験からその対処方法をご紹介していきます。

予期不安とはどういうものか

予期不安とは、これから起こるかもしれない出来事に対して、実際に起きる前から強い不安や恐怖を感じてしまう状態のことです。パニック症のある方に見られることが多い症状として知られていますが、不安症(不安障害)全般でも起こりやすく、外出前や人と会う前、電話をかける前など、さまざまな場面で現れます。

なぜ、まだ起きていないことにこんなに不安になるのか

予期不安が強くなりやすい背景には、いくつかの理由が重なっていることが多いです。
①一度つらい経験をすると、脳が「また同じことが起きるかもしれない」と身構えやすくなる
 過去に強い不安やパニックを経験した場面や状況を、脳が「危険な場所」として記憶してしまうことがあります。似た状況に近づくだけで、同じ警戒反応が起こりやすくなります。
②「もし失敗したら」という想像が、次々と広がってしまう
 一つの心配事を考え始めると、そこから連鎖的に別の心配事へと想像が広がり、実際の出来事よりも大きな不安を先に作り上げてしまうことがあります。
③不安そのものを「悪いもの」として避けようとするほど、意識が不安に向いてしまう
 不安を感じないようにしようと頑張るほど、逆に「不安があるかどうか」を常にチェックしてしまい、余計に不安が意識の中心を占めてしまうことがあります。
④「安全確認」のための行動が、逆に不安を長引かせてしまう
 出かける前に何度も戸締りを確認する、誰かに「大丈夫だよね」と繰り返し聞いて安心しようとする、といった行動は、その場では気持ちが落ち着きますが、長い目で見ると「確認しないと不安になる」というパターンを強めてしまうことがあります。

予期不安との付き合い方

予期不安を完全になくす必要はありません。不安を感じながらでも過ごせる日があってもいいし、うまく付き合えない日があっても構いません。


「不安を消す」より「今できる小さな一歩」に意識を向ける
 不安そのものをゼロにしようとするより、「まず玄関まで出る」「まず電話番号を押す」など、目の前の小さな行動に意識を向けると、想像の広がりに引き込まれにくくなります。


不安な気持ちを、そのまま言葉にしてみる
 「今、うまくいかないかもと思っている」と自分の状態を言葉にするだけで、不安に飲み込まれず、少し距離を取って自分の状態を眺めやすくなることがあります。


呼吸や身体の感覚に意識を戻す時間を持つ
 考えが未来にどんどん広がっていくときは、今の呼吸や足の感覚など、「今、ここ」の身体の感覚に意識を戻す時間を挟むことで、想像の連鎖が少し緩みやすくなります。


「不安があっても行動できた」経験を、小さく積み重ねる
 不安が消えるのを待つのではなく、不安を感じたまま少し行動できた、という経験そのものが、次への安心材料になっていくことがあります。


確認や安心を求める行動を、少しだけ減らしてみる
 「もう一度確認したい」という気持ちが出たときに、あえて一回だけにとどめてみる、あるいは数分待ってから確認する、といった小さな工夫を重ねることで、確認行動そのものに依存しすぎない付き合い方が身についていくことがあります。無理に全部やめる必要はなく、少し減らすだけでも変化につながることがあります。

周囲の人にできること

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」という励ましは、時に本人にとって「わかってもらえていない」と感じさせてしまうこともあります。不安な気持ちそのものを否定せず、「そう感じているんだね」と受け止める関わりの方が、安心につながることが多いです。無理に不安を取り除こうとせず、そばで一緒に小さな一歩を確認していくくらいの距離感が、ちょうどいいこともあります。


予期不安は、本人の意志の弱さや考え方の癖だけで説明できるものではなく、脳の働き方や過去の経験が積み重なって起こっている場合があります。日によって不安の強さに波があるのも自然なことで、うまく付き合えたと思っても、また強く不安になる日が来ることもあります。生活のしづらさが続くようであれば、一人で抱え込まず、主治医や関係機関に相談してみることも選択肢のひとつです。不安を完全にコントロールしようとするより、不安と一緒に過ごす方法を少しずつ見つけていくことが、日々の負担を軽くする手がかりになるかもしれません。

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