昼夜逆転の治し方 うつ病・発達障害・不登校・引きこもりの方が実践する10の対処法
看護師 山田祥和
今回は長文になってしまったので目次を付けました。気になるところがありましたら是非読んでみてください。
目次
- 昼夜逆転は「だらしなさ」ではありません
- なぜ昼夜逆転になるのか?考えられる4つの背景
- うつ病|気力の低下や睡眠の変化
- 発達障害|睡眠リズムの調整が難しい
- 不登校|夜だけが安心できる時間になる
- 引きこもり|朝起きる理由がなくなってしまう
- 昼夜逆転を改善する10の対処法
- ① 寝る時間より「起きる時間」を意識する
- ② 朝、誰かと連絡を取る約束をする
- ③ 朝の光を浴びる
- ④ 「早く治さなきゃ」と焦らない
- ⑤ 寝る前のスマホは「やめる」より「使い方を変える」
- ⑥ 朝ごはんが難しければ「何か一口」から
- ⑦ 昼寝の時間を長くしすぎない
- ⑧ 訪問看護の時間を「起きるきっかけ」にする
- ⑨ 毎日ではなく「1週間でできた日」を数える
- ⑩ 家族に「見張らないでほしい」と伝える
- 不登校の子どもの昼夜逆転|親はどう対応すればいい?
- 昼夜逆転が治らない時は、睡眠障害の可能性も
- よくある質問|昼夜逆転についてのQ&A
- 無理に「朝型」に戻すことだけが目標ではありません
- 一人で悩まず、支援機関にご相談ください
昼夜逆転は「だらしなさ」ではありません
精神科訪問看護の現場でよく受ける相談として、「気づいたら朝方まで起きていて、昼過ぎに起きる生活になった」「夜になると元気になるのに、朝はどうしても起きられない」「昼夜逆転を治したいけれど、何度やってもうまくいかない」というものがあります。
そして、多くの方、多くのご家族が「だらしないと思われますよね」と言われます。
しかし、私はそうは思いません。
長いこと精神疾患を抱える方々と関わってきましたが、昼夜逆転には、その人なりの理由があると感じています。
うつ病で日中に活動する気力が出ない方。
発達障害の特性から睡眠リズムを整えることが難しい方。
不登校になり、学校へ行かなくてよい夜だけ安心できるお子さん。
引きこもり生活が長くなり、朝起きる目的そのものがなくなってしまった方。
理由は人それぞれです。
共通しているのは、本人も好きで昼夜逆転しているわけではないということです。
今回は、精神科訪問看護の現場でご利用者様やご家族、ピアサポーターから聞いてきた、昼夜逆転への具体的な対処法をご紹介します。
すべてを実践する必要はありません。
「これなら自分にもできそう」
そんな方法を一つ見つけてもらえたらと思います。
なぜ昼夜逆転になるのか?考えられる4つの背景
昼夜逆転を改善するためには、まず「なぜ夜眠れず、朝起きられないのか」を考えることが大切です。
① うつ病 気力の低下や睡眠の変化
うつ病では、気分の落ち込みや意欲の低下に加え、不眠や過眠などの睡眠症状がみられることがあります。
日中は何もする気が起きず、横になって過ごす時間が増える。
その結果、夜になっても眠れず、徐々に生活リズムが乱れてしまう場合があります。
このような状態で「早く起きなさい」「もっと活動しなさい」と言われても、本人にとっては大きな負担になることがあります。
まずは十分な休養が必要な状態なのか、少しずつ活動を増やせる段階なのかを見極めることが大切です。
② 発達障害(神経発達症) 睡眠リズムの調整が難しい
ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害がある方の中には、睡眠に関する困りごとを抱えている方がいます。
例えば、興味のあるゲームや動画に集中しているうちに朝になる、気持ちの切り替えが難しく、就寝の準備に移れない、光や音などが気になって眠れない、決まった時間に眠くならない、といったことがあります。
ただし、発達障害があるから必ず昼夜逆転になるわけではありません。
本人の特性や生活環境に合わせた工夫が必要です。
③ 不登校 夜だけが安心できる時間になる
不登校のお子さんの中には、夜になると表情が明るくなり、元気に活動できる子がいます。
日中は学校のことを考えてしまう。
家族が出かける姿を見ると、自分だけ学校に行けていないことを意識してしまう。
しかし、夜になれば学校へ行く必要がありません。
周囲から何かを求められることも少なくなります。
そのため、夜の時間が安心できる居場所になっている場合があります。
このようなお子さんに、いきなり朝型の生活を求めても、うまくいかないことがあります。
睡眠時間だけでなく、日中に感じている不安やプレッシャーにも目を向けることが大切です。
④ 引きこもり 朝起きる理由がなくなってしまう
仕事や学校など、日中の予定がなくなると、起床時間を一定に保つことが難しくなる場合があります。
「朝起きてもやることがない」
「昼間は人と会いたくない」
「夜のほうが静かで落ち着く」
そんな生活が続くうちに、少しずつ睡眠リズムが後ろにずれていくことがあります。
昼夜逆転を改善するには、単に睡眠時間を変えるだけでなく、日中に小さな楽しみや役割をつくることも大切だと感じています。
昼夜逆転を改善する10の対処法 みんなが実践している工夫
ここからは、ご利用者様やご家族、ピアサポーターの方々から聞いてきた工夫をご紹介します。
医学的に推奨される生活習慣もあれば、日々の生活の中から生まれた工夫もあります。
すべての方に同じ効果があるわけではありませんが、参考にしていただければと思います。
① 寝る時間より「起きる時間」を意識する
「夜12時には絶対に寝よう」
そう決めたのに眠れない。
時計を見るたびに焦って、ますます眠れなくなる。
こんな経験をした方も多いのではないでしょうか。
そこで、寝る時間を無理に決めるより、起きる時間を少しずつ整えることを意識している方がいます。
例えば、「まずは毎日11時頃に起きる」「慣れてきたら10時30分にしてみる」という方法です。
ただし、睡眠時間を大幅に削ってまで起きる必要はありません。
体調や睡眠時間を確認しながら、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
② 朝、誰かと連絡を取る約束をする
「朝起きたら家族にLINEを送る」「訪問看護師と決めた日に、起きたことを報告する」そんな小さな約束を生活の目印にしている方もいます。
誰かとのつながりが、起きるきっかけになることがあります。
特に引きこもりが続いている方の場合、生活リズムだけでなく、人との関わりを少しずつ増やす機会にもなります。
大切なのは、連絡できなかった日を責めないことです。
できた日を一緒に喜ぶ。
それくらいの関わり方がよいのではないかと思います。
③ 朝の光を浴びる
朝の光を浴びることは、体内時計を整えるために役立ちます。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、朝から日中にかけて光を取り入れることが勧められています。
ただし、いきなり散歩に出かける必要はありません。
例えば、起きたらカーテンを開ける、窓際で少し過ごす、ベランダに出てみる、体調のよい日は近所を歩いてみる
これだけでも、生活に朝の区切りをつくるきっかけになります。
感覚過敏がある方は、光の強さにも配慮しながら、自分に合った方法を探してみてください。
④ 「早く治さなきゃ」と焦らない
訪問看護の現場で、とても大切だと感じていることです。
昼夜逆転している方の多くは、自分でも何とかしたいと思っています。
それでも改善できないから悩んでいるのです。
「明日こそ早く起きよう」
「また今日も昼まで寝てしまった」
そんなことを繰り返していると、眠ること自体がプレッシャーになってしまいます。
まずは、「今は生活リズムが乱れやすい時期なんだ」と受け止めることも必要です。
焦らず、少しずつ。
生活リズムの改善には、そのくらいの気持ちで取り組むことが大切だと思います。
⑤ 寝る前のスマホは「やめる」より「使い方を変える」
「寝る前にスマホを見ないようにしましょう」
これはよく聞くアドバイスです。
しかし、スマホが唯一の楽しみになっている方にとって、突然使用をやめることは簡単ではありません。
そこで、少しずつ使い方を変えている方もいます。
例えば、寝る前は刺激の強いSNSを見ない、ゲームをする時間を少し短くする、画面を見続ける代わりに音声を聴く、スマホを見る場所を寝床以外にする
夜間の強い光や刺激のあるコンテンツは、睡眠の妨げになることがあります。
そのため、できれば就寝前のスマホ使用を減らしていくことが望ましいですが、最初から完璧を目指す必要はありません。
続けられる工夫を一緒に考えていくことが大切です。
⑥ 朝ごはんが難しければ「何か一口」から
昼夜逆転している方の中には、起きた直後に食欲がない方もいます。
「朝ごはんを食べましょう」と言われても、難しいことがあります。
そんな時は、まず水分を取ることから始めている方もいます。
「好きな飲み物を一杯飲む」
「食べられそうならゼリーや果物を少し食べる」
朝食を取ることは生活リズムを整えるうえで役立ちますが、食欲がない時に無理をする必要はありません。
少しずつ朝の習慣をつくっていければよいと思います。
⑦ 昼寝の時間を長くしすぎない
昼夜逆転していると、日中に強い眠気が出ることがあります。
眠い時に休息を取ることは大切ですが、長時間の昼寝は夜の睡眠に影響する場合があります。
短時間の昼寝で済ませられる方は、
「アラームをかける」
「午後の早い時間に休む」
といった方法を取り入れています。
ただし、うつ病などで強い疲労感がある場合は、休息が必要なこともあります。
無理に眠気を我慢するのではなく、体調に合わせて調整しましょう。
⑧ 訪問看護の時間を「起きるきっかけ」にする
精神科訪問看護を利用している方の中には、訪問時間を生活リズムの目印にしている方がいます。
例えば、「訪問看護が来る日は午前中に起きてみる」「訪問までに着替えてみる」「看護師が来たら少し話をする」といった小さな目標です。
訪問看護の目的は、単に起こすことではありません。
睡眠や精神状態を確認しながら、無理のない生活リズムを一緒に考えていきます。
一人では難しいことも、誰かと一緒なら取り組める場合があります。
⑨ 毎日ではなく「1週間でできた日」を数える
生活リズムを整えようとしても、毎日うまくいくとは限りません。
昨日は早く起きられたけれど、今日は昼まで寝てしまった。
そんな日もあります。
そこで、1日単位ではなく、1週間単位で振り返る方法を取り入れている方がいます。
「今週は3日、いつもより早く起きられた」
「先週より外に出られる日が増えた」
できなかった日ばかりを見るのではなく、できたことに目を向ける。
これは不登校のお子さんへの支援でも大切にしている考え方です。
学校へ行けたかどうかだけで判断せず、生活の中にある小さな変化を一緒に見つけていきたいと思います。
⑩ 家族に「見張らないでほしい」と伝える
昼夜逆転している方から、こんな話を聞くことがあります。
「毎朝、親に早く起きなさいと言われるのがつらい」
「自分でもわかっているのに、何度も言われると嫌になる」
ご家族も心配だから声をかけているのだと思います。
しかし、本人にとっては、その声かけがプレッシャーになる場合があります。
そこで、「起きられなかったことは責めないでほしい」「起きられた時に声をかけてほしい」と家族に伝えている方もいます。
家族ができることは、本人を管理することだけではありません。
安心して生活リズムを整えていける環境をつくることも、大切な支援の一つです。
不登校の子どもの昼夜逆転 親はどう対応すればいい?
不登校のお子さんの昼夜逆転に悩むご家族は少なくありません。
「朝起きられないから学校へ行けないのではないか」
「夜中までゲームをしているから生活が乱れるのではないか」
そう考えることもあると思います。
しかし、実際には学校への不安や対人関係のストレスなどが先にあり、その結果として昼夜逆転していることもあります。
その場合、睡眠時間だけを整えようとしても、根本的な困りごとが残ってしまいます。
私が大切にしたいのは、まずお子さんが安心できることです。
昼夜逆転を治すことと、学校へ行けるようになることは、必ずしも同じではありません。
学校へ行くことを急がず、まずは心身の状態や日中の過ごし方を一緒に考える。
本人が好きなゲームや趣味を通してコミュニケーションを取る。
少しずつ人との関わりを増やしていく。
そうした積み重ねが、結果的に生活リズムの改善につながることもあります。
ご家族だけで抱え込まず、学校や医療機関、訪問看護などに相談していただきたいと思います。
昼夜逆転が治らない時は、睡眠障害の可能性も
昼夜逆転が長期間続いている場合、生活習慣だけの問題とは限りません。
例えば、夜遅くならないと眠れず、朝はどうしても起きられない状態が続く場合、「睡眠・覚醒相後退障害」などの概日リズム睡眠・覚醒障害が関係していることもあります。
また、うつ病などの精神疾患、服用している薬、身体疾患などが睡眠に影響する場合もあります。
次のような状態が続いている時は、医療機関への相談をおすすめします。
- 昼夜逆転が長期間続き、生活に支障が出ている
- 十分に眠っているつもりでも、強い眠気がある
- 朝起きられず、仕事や学校などに大きな影響が出ている
- 気分の落ち込みや強い不安が続いている
- 生活リズムを改善しようとしても、なかなかうまくいかない
睡眠の問題には、専門的な評価や治療が必要な場合があります。
自己判断で睡眠薬を増減したり、徹夜して無理に生活リズムを戻そうとしたりせず、主治医に相談することが大切です。
よくある質問 昼夜逆転についてのQ&A
Q. 昼夜逆転は何日で治りますか?
改善にかかる期間には個人差があります。
数日で生活リズムが整う方もいれば、数週間以上かけて少しずつ調整する方もいます。
背景に精神疾患や睡眠障害がある場合には、さらに時間が必要なこともあります。
大切なのは、短期間で治そうと焦らないことです。
Q. 昼夜逆転を治すために徹夜するのは効果がありますか?
徹夜によって一時的に眠る時間が変わることはありますが、睡眠不足によって体調や精神状態が悪化する可能性があります。
特に精神疾患のある方は注意が必要です。
徹夜による調整を自己判断で行うことはおすすめしません。
Q. 昼夜逆転している子どもを無理に起こしたほうがいいですか?
一律に無理やり起こすことはおすすめしません。
特に不登校のお子さんの場合、睡眠不足や不安が強くなってしまうことがあります。
まずは睡眠時間や日中の様子を確認し、本人と相談しながら無理のない起床時間を考えていくことが大切です。
Q. 昼夜逆転していても、訪問看護は利用できますか?
精神科訪問看護では、睡眠リズムや日常生活の相談も行っています。
昼夜逆転の背景にある精神症状や生活上の困りごとを確認し、本人に合った方法を一緒に考えることができます。
利用には医師の指示など一定の条件がありますので、まずはご相談ください。
無理に「朝型」に戻すことだけが目標ではありません
こころいでは、日々の支援の中で「スモールステップ」を大切にしています。
昼夜逆転についても同じです。
昨日より30分早く起きられた。
カーテンを開けることができた。
昼間に少し外へ出られた。
家族と一緒に食事ができた。
そんな小さな変化も、大切な一歩です。
もちろん、仕事や学校などの社会生活を送るうえで、睡眠リズムを整えることが必要になる場合もあります。
しかし、最初から完璧な朝型生活を目指す必要はありません。
まずは、その人にとって無理のない生活をつくること。
そして、少しずつ日中に楽しみや役割を増やしていくこと。
私は、そうした積み重ねを大切にしたいと思っています。
一人で悩まず、支援機関にご相談ください
昼夜逆転の背景には、うつ病、発達障害、不登校、引きこもりなど、さまざまな事情があります。
「何度言っても朝起きてくれない」
「学校に行かず、夜中までゲームをしている」
「家族として、どう関わればいいのかわからない」
そんな悩みを抱えているご家族も多いと思います。
でも、ご本人だけ、ご家族だけで解決しようとする必要はありません。
昼夜逆転は、本人の努力不足ではありません。
その人なりの理由があり、その人に合った方法があります。
「朝起きられない自分はダメだ」と思わなくて大丈夫です。
まずは、できることから一つずつ。
私たちも一緒に考えていきたいと思います。
参考資料
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 国立精神・神経医療研究センター「概日リズム睡眠・覚醒障害」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠相後退(前進)症候群」
※本記事は一般的な情報と訪問看護現場での経験をもとに作成しています。記載した工夫はすべての方に適するものではありません。睡眠の問題が長く続く場合や心身の不調が強い場合は、主治医などの専門職にご相談ください。

