神経性やせ症の支援で感じること 精神科訪問看護と摂食障害
看護師 山田瑞枝
精神科訪問看護師として地域で活動していると、神経性やせ症(摂食障害)の方と関わる機会があります。
神経性やせ症は体重や食事の問題として捉えられることが多い病気です。しかし実際に支援をしていると、それだけでは語れない難しさを感じます。
訪問看護では精神状態を支える視点と身体状態を守る視点の両方が求められます。どちらか一方だけでは十分な支援にならないことを日々実感しています。
神経性やせ症の方は、周囲から見れば痩せていることが明らかであっても、体重が増えることへの強い不安を抱えていることがあります。食事を摂ることそのものが恐怖につながっている場合も少なくありません。そのため、ただ食べるように促すだけでは状況が改善しないことがあります。
訪問看護では、まず本人がどのような思いを抱えているのかを丁寧に聞くことを大切にしています。学校での悩みや人間関係の苦しさ、自分自身への厳しさなど、食事の問題の背景にはさまざまな要因が存在しています。話を重ねる中で少しずつ本音が見えてくることもあります。
一方で、身体状態への注意も欠かせません。神経性やせ症は精神疾患でありながら、身体的には命に関わる状態になることがあります。低栄養が続くことで脈拍が低下したり、血圧が下がったり、強い倦怠感が出現したりします。本人は普段通りに過ごしているつもりでも、身体は限界に近づいていることがあります。
訪問時には会話だけでなく、食事量や活動量、脈拍や血圧なども確認します。精神科訪問看護でありながら身体看護の視点が非常に重要になる場面です。
支援をしていて印象的なのは、回復の兆しが見え始めた時です。少し元気が出てくると、自分で料理を始めたり、買い物に出かけたり、新しいことに挑戦したりするようになります。意欲が出てくることは喜ばしい変化ですが、その反面、活動量が増えたことで体重が減少してしまうこともあります。
周囲から見ると良い変化に見えても、身体的にはさらにエネルギー不足になる場合があります。そのため精神面の回復と身体面の安定を同時に見ていく必要があります。
また、神経性やせ症ではご家族の負担も決して小さくありません。体重が減少していく姿を見ながら、どう関わればよいのか悩み続けているご家族も多くいらっしゃいます。食事を勧めれば対立になり、見守れば不安になる。そのような葛藤を抱えながら日々過ごされています。
訪問看護では本人だけでなく、ご家族のお話を伺うことも大切な役割です。不安や悩みを共有し、一緒に考えていくことで支えになることがあります。
神経性やせ症の回復は体重だけで判断できるものではありません。新しい食材に挑戦できたことや、外出する機会が増えたこと、人と話す時間が増えたことなども大切な変化です。将来の目標について語れるようになる方もいます。
そうした小さな変化を積み重ねながら、自分らしい生活を少しずつ取り戻していく過程こそが回復なのだと思います。
神経性やせ症は心の病気であると同時に身体の病気でもあります。だからこそ精神看護と身体看護の両方が必要です。
訪問看護では、ご本人の思いに寄り添いながら身体状態にも目を向け、主治医やご家族と連携しながら支援を続けています。地域で暮らしながら回復を目指す方々にとって、その支えの一つになれればと感じています。


