「やればできる」は本当か? 「努力は報われる」は本当か? 精神科訪問看護の就労支援

看護師 山田祥和

私には毎朝の楽しみがあります。
それは、大谷翔平選手の活躍を朝のテレビのニュースで見ることです。

今日もホームランを打った、昨日は二刀流で活躍した、チームを勝利に導いた。
そんなニュースを見るたびに、「本当にすごいな」と感心してしまいます。

ちなみに、私の子どもの頃の夢はプロ野球選手になることでした。
野球が好きで、野球中継を見ながら、「いつか自分もあの舞台に立ちたい」と思っていました。

しかし今、冷静に考えてみると、いったいどこまで努力をすれば大谷翔平選手のようになれるのでしょうか。

毎日何時間も練習し、誰よりも走り込みをし、食事や睡眠も徹底的に管理する。
それでも大谷選手になれる人は、ほとんどいないでしょう。
むしろ、大谷選手より努力をしたとしても、ほとんどの人は大谷選手にはなれないでしょう。

そこで今日は、努力する場所について考えてみたいと思います。

精神科訪問看護の就労支援


精神科訪問看護の就労支援というと、生活リズムを整えることや服薬管理、体調の安定、不調時の対処方法をイメージされる方が多いかもしれません。

もちろんそれらも大切です。
しかし、私たちが就労支援の中で非常に重要だと考えていることがあります。

それは、「本人の強みを見つけその人に合った場所を探すこと」です。

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努力だけでは越えられない壁がある


世の中には「やればできる」という言葉があります。
前向きな言葉ですし、私も努力すること自体は大切だと思っています。

しかし、支援の現場にいると、「やれば何でもできる」という考え方には無理があると感じます。

例えば私が今日から、「プロ野球選手になりたい」と思ったとします。
そして毎日何時間も練習し、血の滲むような努力を続けたとしても、プロ野球選手になれるでしょうか。

おそらく無理でしょう。
もちろん今より野球は上手くなると思います。
草野球では活躍できるかもしれません。
しかし、プロ野球選手というレベルには届きません。

当然努力によって伸びる部分はあります。
しかし、人には向き不向きや特性、得意不得意があります。
これは怠けているわけでも、根性が足りないわけでもありません。

残酷な現実です。

苦手な場所で戦い続ける人たち


精神疾患や発達障害のある方の中には、長年自分に合わない環境で頑張り続けてきた人が少なくありません。

人と話すことが極端に苦手なのに接客業を続けている人、細かな確認作業が苦手なのに事務職を続けている。人、大人数が苦手なのに常に集団行動を求められる職場にいる人

周囲からは、「もっと頑張れ」と言われます。
本人も、「努力が足りないんだ」と思います。
しかし、実際には努力不足ではなく、フィールドが合っていないだけということがあります。

魚に木登りをさせても上手くいきません。

魚が悪いわけではありません。

木が悪いわけでもありません。

泳ぐ場所ではなかっただけです。

強みは本人も気づいていないことが多い


精神科訪問看護では、利用者さんと長い時間をかけて関わります。
雑談をしたり、一緒に散歩をしたり、困りごとを聞いたりする中で、「実は人の話を聞くのが上手だな」、「細かい作業への集中力がすごいな」、「パソコンが得意だな」、「人への気配りが自然にできるな」といった強みが見えてきます。

面接だけでは分からない部分です。
本人にとっては当たり前すぎて、自分の強みだと思っていないことも少なくありません。

だからこそ第三者の視点が必要になります。

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就職先を探す前に、自分のフィールドを探す


就労支援というと、どうしても「どこに就職するか」に目が向きがちです。
しかし、その前に考えなければならないことがあります。

それは、「自分が力を発揮できる場所はどこなのか」ということです。
力を発揮できない場所でいくら頑張っても時間の無駄です。

静かな環境が向いている人もいます。
一人で黙々と作業する方が力を発揮できる人もいます。
逆に、人と関わることで能力を発揮する人もいます。

大切なのは世間的に良い仕事を探すことではありません

自分に合った仕事を探すことです。

私たちの仕事は「可能性のある場所」を一緒に探すこと


精神科訪問看護は病気だけをみる仕事ではありません。
その人の人生そのものを支える仕事です。

就労支援も同じです。
無理に頑張らせることではなく、

①本人の強みを見つけること。

②その強みが活きる環境を一緒に探すこと。

③そして失敗しても修正しながら、自分らしく働ける場所を見つけていくこと。

それが私たちの大切な役割だと考えています。

確かに努力は大切です。
しかし、努力以上に大切なのは、「どこで努力するか」です。

適材適所。
自分に合ったフィールドが見つかった時、人は驚くほど力を発揮します。

精神科訪問看護は、そのフィールド探しを一緒に行う支援でもあるのです。

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