不登校支援 「外に行けない」「学校に行けない」 訪問型の支援という選択肢
看護師 山田祥和
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、多くの親御さんは戸惑い、不安になり、どう接すればいいのか悩みます。
「甘えではないか」「無理やりでも行かせるべきでは?」
「育て方が悪い」などと周囲から言われてしまうこともあるかもしれません。

しかし、実際には、不登校の背景にはさまざまな理由があり、本人も家族もどうしていいかわからない中で必死に立ち止まっています。
家から出ることすらも難しくなっている場合もあります。
そんな子どもや家族に対して、私たちは「訪問型の不登校支援」を行っています。これは、支援者が自宅に訪問し、子どもや家族に直接関わるスタイルです。
無理に学校復帰を目指すのではなく、「安心できる関係」「社会とのつながり」をつくることを第一の目的としています。
学校以外の「安心できる場所」を家の中に
訪問型支援は、子どもが最も安心できる場所である「自宅」で行われることが特徴です。
学校という集団の場では心が閉じてしまう子どもでも、自分の部屋やリビングという慣れた空間では、ほんの少しだけ心を開くことがあります。
支援者は、はじめから何かを「教える」わけではありません。まずは顔を合わせ、「こんにちは」とあいさつし、少しずつ信頼関係を築いていきます。
最初は会話すらできないこともあります。でも、それでいいのです。無理に話そうとしなくても、同じ空間にいて、子どもの世界に寄り添い続けること。
それが支援の第一歩になります。
言葉にならない「つらさ」に共感する
不登校になる理由は本当にさまざまです。いじめ、発達特性、家庭内の問題、完璧主義、先生との相性、集団生活への不適応など、一人ひとり背景が異なります。しかし共通しているのは、「自分の気持ちをうまく言葉にできない」こと。
訪問型支援では、子どもの表情やしぐさ、話さない沈黙までも大切な「サイン」として受け取ります。
そして、「わかってくれる人がいる」という感覚を少しずつ育てていきます。その信頼関係が土台となって、やがて「外の世界」に出る力に変わっていくのです。
家族へのサポートも大切に
子ども本人への支援と同じくらい大切なのが、家族へのサポートです。不登校が続くと、親も自信を失い、孤立してしまうことがあります。「自分の育て方が悪かったのでは」と自責の念にかられたり、夫婦関係にまで影響が出たりすることもあります。
訪問型支援では、親の気持ちを受け止め、共に子どもへの向き合い方を考える時間も大切にします。親が安心し、落ち着いて子どもと向き合えるようになることが、支援の大きな柱なのです。
「学校に戻ること」だけがゴールではない
訪問型支援の目的は、「学校に戻すこと」ではありません。もちろん、子どもが「行きたい」と思ったときにはその気持ちを支えますが、焦らせたり無理に誘導したりすることはありません。
むしろ、どんな生き方や学び方がその子に合っているのかを一緒に探すことが大切です。フリースクール、通信制高校、自宅学習、地域活動など、「学校」以外にも多くの選択肢があります。

最後に
子どもが不登校になることは、決して「失敗」ではありません。それは、「今のままでは無理がある」という体からのサインであり、新しい生き方を探すチャンスでもあります。訪問型支援は、その子らしい人生を取り戻すための、一つの大切な手段です。
不登校という言葉にとらわれず、一人ひとりの子どもと丁寧に向き合う社会であってほしいと、心から願います。
私たちはこれまで多くのお子さんを見てきました。時間が経てば不思議と行けることもあります。焦らないことが一番だと思います。