子育てや不登校支援に活かす「強化」と「罰」──してほしい行動を育てる心理学的アプローチ

看護師 山田祥和

「何度言っても危ないことをする」「イタズラばかりして注意を聞かない」「食事というのにゲームをやめない」「スマホばかりで勉強しない……」

子育てや不登校支援の現場で、保護者や支援者からよく聞かれる声です。

子どもが望ましくない行動を繰り返したり、してほしい行動がなかなか定着しなかったりすると、大人はつい「怒る」「叱る」や「説得する」といった対応に走りがちです。

しかし、それでは一時的で、いつも同じことで自分は怒っているとため息をついたこともあるでしょう。

そこで、今回は行動心理学の観点から、「強化」と「罰」という概念を紹介し、子育てや不登校支援にどのように活かせるかを考えてみたいと思います。

「強化」と「罰」って何?


まず、「強化」とは、ある行動の頻度を増やすことです。
逆に「罰」は、ある行動の頻度を下げることです。

重要なのは、「良い」「悪い」ではなく、「行動が増えるか減るか」で考えることです。増えるのが強化、減るのが罰です。

たとえば、子どもが自分から宿題をしたときに褒めたら、その後も自分からやるようになったとします。これは勉強するという行動が増えたので「強化」です。

一方、ゲームばかりしていた子に対して、親がお小遣いを減らした結果、次からはゲーム時間を守るようになった。このような場合はゲームが減ったので「罰」です。

「正」と「負」 子どもに効く「強化」の使い方

次に正と負の説明ですが、「与えるのが正」で「取り除くのが罰」です。

1. 正の強化(与えて行動を増やす)

いちばんポピュラーなのがこれです。
「できた!」という行動に対して、「褒める」「ごほうびを渡す」など、ポジティブな反応を返します。

例:
不登校の子が朝起きられた → 「早起きできてすごいね!」と声をかける→次の日も朝起きられる。
子どもが手伝いをした → 一緒に遊ぶ時間を長くとる→お手伝いを率先してやる

ポイントは、「小さな一歩でも反応すること」。
たとえ学校に行けなくても、「制服に着替えた」「玄関まで来た」という小さな行動に対して、きちんと肯定的な反応を返すことで、行動は少しずつ強化されていきます。

2. 負の強化(嫌なことを取り除いて、行動を増やす)

これはあまり意識されませんが、じつは支援ではよく使われています。

例:
子どもが自分から勉強をした → 「じゃあ今日はもう口出ししないよ」と見守る
子どもが登校した → 翌日は無理をさせず、午後から休ませる

「嫌なことをしないよ」と伝えることで、「またこの行動をしよう」と思ってもらう方法です。

「罰」は本当に必要?どう使う?


罰というと「叱る」や「罰を与える」というイメージが強いですが、実は使い方には注意が必要です。

1. 正の罰(嫌なことを加えて行動を減らす)

これは、たとえば「暴言を吐いたら注意する」「宿題をやらなかったら叱る」などが該当します。

短期的には効果がありますが、子どもとの信頼関係を壊したり、反発心を生むリスクがあります。連発すればするほど、効かなくなり、エスカレートする可能性もあります。

支援の場では、できるだけ避けたいアプローチです。

2. 負の罰(良いことを取り上げて行動を減らす)

これはたとえば「約束を守らなかったらゲームはナシ」「暴れたら公園には行かない」など。
ルールとして決まっていることであれば、効果的な手段です。

ただし、感情的に罰するのではなく、あらかじめルールとして明確にしておくことが大切です。「〇〇をしたら××はナシね」と事前に伝えると、納得しやすくなります。

強化を中心に、罰は最小限に

基本的には、「強化」をベースにして支援や子育てを組み立てた方が、子どもは伸びやすくなります。
そして、「罰」はどうしても必要なときの最小限にとどめるのが理想です。

なぜなら、強化によって“してほしい行動”を増やす方が、結果的に“してほしくない行動”を減らすことにつながるからです。

どんな子どもにも「できた」がある


不登校の子どもに限らず、困難を抱えた子どもたちにも、「その子なりに頑張っていること」「できていること」が必ずあります。

たとえそれが、毎日同じ時間に起きられるようになった、親と目を合わせて話せるようになった──そんな些細なことでも、本人にとっては大きな一歩です。

その一歩を、見逃さずに強化していくことが、子どもたちの「生きる力」を育てる第一歩になるのです。


私のおすすめ


「叱るより、見つけて褒める」──これは簡単なようで、忙しい毎日の中では忘れてしまいがちな視点です。

実際危険な場面で悠長に褒めていてたら危ないこともあります。

急ぎの時は叱ることも必要です。

時々しか叱らなければ、本当にその叱りは効きます。

普段は褒めることを心掛け、叱るのは緊急な時とすることをおすすめします。


子どもの行動は、私たち大人のかかわり方次第で大きく変わります。

子育てや支援の現場で、強化と罰という心理学的な視点を上手に使いながら、一歩ずつ「できた」を増やしていきましょう。こころの仕組みをわかっていると子育てにもゆとりが出ます

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