双極症の波を小さくするための工夫 ピアサポーターとして感じてきたこと
ピアサポーター K
双極症と付き合っていく中で、私は何度も「どうしてまた波が大きくなってしまったんだろう」と振り返ってきました。薬の問題だけでは説明できないことが多く、後から考えると、そこには必ず生活環境や人との関わり方が影響していました。
ピアサポーターとして多くの方と関わる今、強く感じているのは、双極症の安定には環境調整がとても大きな力を持っているということです。本日は、当事者として、そしてピアとして感じてきた環境調整の大切さをお伝えします。

双極症の波は「頑張りすぎる環境」で大きくなる
躁状態のとき、私は「調子がいい自分」を本当の自分だと思い込み、仕事も予定も一気に詰め込んでいました。その時は疲れを感じにくく、周囲からも「元気そうだね」と言われることが多かったのです。
でも、後から必ず反動が来ました。体も心も一気に落ち込み、動けなくなり、自分を責める。今振り返ると、頑張りすぎを止めてくれる環境がなかったことが、波を大きくしていたと感じます。
環境調整とは、甘やかすことではありません。むしろ「これ以上無理をしないための安全装置」だと私は思っています。
生活リズムは「守れない日があってもいい」
双極症の安定には、睡眠と生活リズムが大切だとよく言われます。私自身も、寝不足が続いたあとに躁転した経験が何度もあります。
ただ、当事者として伝えたいのは、完璧に整えようとしなくていいということです。毎日同じ時間に眠れなくても、「大きく崩れたままにしない」ことが大切でした。夜更かししてしまった翌日は、予定を減らす、刺激を避ける。それだけでも波は小さくなります。
支援者や家族に「ちゃんとしなきゃ」と言われ続けると、それ自体がストレスになります。自分で調整できる余白を残すことも、環境調整のひとつです。
刺激を減らすことは、自分を守ること
躁状態のとき、私は連絡を取りすぎたり、SNSにのめり込んだり、買い物を止められなくなったりしました。
私の場合、特に交友関係が広がります。
その場では楽しくても、後で強い後悔と疲労が残ります。
今は、刺激が増えそうなときほど意識してペースを落としています。予定を一つ減らす、返信をすぐにしなくていいと決める、財布やカードを人に預ける。これらは「制限」ではなく、自分を守るための工夫だと実感しています。
ピアとして関わる中でも、刺激を減らす環境がある人ほど、回復が穏やかだと感じます。
人間関係は「全部大切にしなくていい」
双極症があると、人との距離感が極端になりやすいと感じます。躁のときは近づきすぎてしまい、うつのときは一気に離れてしまう。私もその繰り返しでした。
環境調整として大きかったのは、「安心できる人を数人持てば十分だ」と思えるようになったことです。全員に理解してもらおうとしなくていい。分かってくれる人が一人でもいれば、それは大きな支えになります。
ピアサポーターや主治医、訪問看護師さん、相談支援の方の存在は、感情を整理する安全な場所としてとても重要だと感じています。

支援は調子がいい時からつながっておく
調子が悪くなってから支援につながるのは、とてもエネルギーがいります。私自身、元気なときほど「もう大丈夫」と支援から離れたくなり、その後に大きく崩れた経験があります。
今は、安定している時期から支援を生活の一部として組み込むことを意識しています。定期的に話せる場所があるだけで、「少しおかしいかも」と早めに気づけるようになりました。
これは多くの当事者の方が口にする、大切なポイントだと感じています。
環境調整は「自分を責めないための土台」
双極症の波を小さくする環境調整とは、特別な方法ではありません。生活の負担を減らし、刺激を整え、頼れる人や支援をそばに置くこと。その積み重ねです。
ピアとして、当事者として伝えたいのは、波が出たときに自分を責めなくていい環境を作ることが、何より大切だということです。波をゼロにしなくてもいい。小さく、穏やかにできれば、それで十分です。
双極症とともに生きる中で、環境を整えることは、自分を大切にする行為そのものだと、私は思っています。

