入退院を経験したからこそ語れる、精神科病院で落ち着いて過ごすための考え方

ピアサポーター K

精神科の病院で過ごす時間は、多くの人にとって不安を抱えやすいものです。初めての入院でも、何度目かの入院でも、病院という環境に身を置くと、どう過ごせば良いのか迷うことがあります。

私自身も入退院をくり返す中で、自分なりに楽に過ごす方法を見つけてきました。この記事では、その経験から学んだ病院生活のコツをお伝えします。

病院のペースに合わせすぎないという工夫


病院には決まったリズムがあります。食事や服薬の時間、消灯時間、入浴、作業療法、レクリエーション、各種プログラムなど、生活の流れは大きく管理されています。

最初に入院した時は、薬の時間になるとチャイムが鳴り、ナースステーションの前に自分のコップを持って並んでいたのを思い出します。ずらりと列ができ、何事かとびっくりしました。

その頃の精神病院には、20年30年、40年入院しているという人もザラにいました。

薬の時間に並ぶ、リネン交換は自分で行う、作業療法には参加する、食事は大ホールでみんなで食べるといった、入院生活には暗黙のルールも含め、多くのルールが存在します。

もちろん守る必要はありますが、すべてを病院の流れにぴったり合わせようとすると、自分の気持ちや体調が置き去りになってしまうことがあります。

周囲の雰囲気に合わせようと頑張りすぎず、不安を感じた時や眠れない夜は、遠慮せず看護師に相談することが大切です。病院は気持ちを整える場所であり、自分を押しつぶす場所ではありません。

私は体調がすぐれない時は、正直に伝えていました。「病院には休みに来ている」と。

距離を取りすぎず、近づきすぎず


病棟ではいろいろな人生を歩んできた人が同じ場所にいます。病状も様々で、テンションの高い人に絡まれることもあります。

誰かと深く仲良くする必要はありませんが、完全に孤立してしまうと、自分を保つのが難しくなることもあります。

私の場合、あいさつを交わせる相手が一人いるだけで、気持ちはずいぶん軽くなります。困った日はスタッフに少し話を聞いてもらうなど、誰かとのつながりを細くても保つことが、病院生活を安定させる助けになります。

何度か入院して連絡先を交換しましたが、私は病院仲間とは長続きしませんでした。

生活リズムを完璧に整えようとしない


入院すると生活のペースが大きく変わります。病室の環境や他の患者の物音、慣れない生活のストレスなどが重なり、昼夜逆転したり眠れなくなったりすることがあります。

そんな時、無理にすぐ整えようとするとかえって苦しくなります。今は回復の途中なのだと受け止め、少しずつ整えていくつもりでいる方が、結果的にうまくいきます。

眠れない夜はひとりで抱え込まず、病棟スタッフに声をかけるだけでも安心感が変わります。


症状の波は後戻りではなく、回復の道のりの一部


入院中でも調子の波は必ず訪れます。不安が強くなったり、落ち込みが深くなったり、まるで症状が戻ってしまったように感じる日もあります。しかし、後から振り返ると、その波も回復のプロセスの一つであると気づきます。

症状が出た日は、できなかった自分を責めるより、そういう日もあると受け流すことが大切です。早めにスタッフに伝えたり、ゆっくり休んだりすることが悪化を防ぎます。

退院後の生活は、大きく考えなくていい


退院が近づくと、外の世界に戻ることへの不安が強くなります。元の生活にすぐ戻れるのか、ちゃんと暮らしていけるのかというプレッシャーが心を支配することもあります。

そんな時は、退院後の生活を細かく完璧に描く必要はありません。退院した翌日をどう過ごすかという小さな計画や、困ったときに連絡できる人を一人だけ思い浮かべておくだけでも、ずいぶん安心できます。

大きな未来ではなく、目の前の一日を組み立てることが、退院の不安を和らげてくれます。

入院した自分を否定しない


精神科に入院すると、自分は弱いのではないかと感じやすくなります。周囲の人が普通に生活している中で、自分だけが病院で過ごしているという状況は、どうしても自己否定を招きがちです。

しかし、必要なときに治療を受けられるという行動こそ、実は大きな勇気です。助けを求めることは弱さではなく、回復を目指す強さでもあります。

私自身も何度かの入院を経て、自分の限界人に頼ることの大切さに気づきました。

入院は人生の停止ではなく、立て直しの時間


入退院を経験して思うのは、病院で過ごす時間は人生の停止ではなく、生活や心を立て直すための調整期間だということです。再入院があっても、それは失敗ではありません。必要な治療を必要な時に受けられているということです。

同じ経験をしてきた者として伝えられるのは、人はひとりではないということです。治療には時間がかかることもありますが、前に進む日は必ず迎えられます。ピアサポートは、その道を歩む人と伴走する力を持っています。

私の経験が誰かの役に立てればと思っております。

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