精神疾患と付き合いながら生きるコツ ピアサポーターが実践している「無理をしない生き方」

ピアサポーター K

精神疾患と暮らす日々は、周囲の人が思っているよりずっと繊細で、消耗の大きいものです。
「どう付き合えばいいのか分からない」「波がしんどい」「同じ失敗をくり返してしまう」そんな声を私たちの仲間からも聞きます。

精神疾患は“治すもの”ではなく、“付き合うもの”です。

本日は、私(当事者)の視点から、今日からできる10のコツを整理します。

1. 自分の「波のパターン」を知る


精神疾患には必ず波があります。
そして、その波は人それぞれ固有のリズムを持っています。
季節(春・秋に落ちやすい、冬に不調が増える)
ホルモン周期
人間関係の変化
仕事の忙しさ
天候・気圧

この“揺らぎの理由”を把握するだけで、
「なんで私はダメなんだ」→「こういう時期だから仕方ない」に変わります。

2. 生きるための“最低限のライン”を決める


調子が悪い時には、「これだけできればOK」という最低ラインを決めておきます。

シャワーは浴びられなくても顔だけ洗う
ご飯は作れなくても何か一口食べる
布団から出られない日は水分だけ摂る

これがあるだけで、
“できる・できない”の自己否定が減り、死守すべき基準が明確になります。

3. 予定は“余白”を前提に組む


予定を詰め込むと、精神疾患の再燃リスクが跳ね上がります。
ピアサポートの現場では、予定の入れすぎは最大のトリガーです。
1日の予定は最大2つまで
次の日は休養日にする
30分前後の移動時間に余白を入れる

“できる時にやりすぎない”は、精神疾患と付き合う鉄則です。

4. 調子が悪いときの“自分の説明書”を作る


不調の日は、言語化も判断力も落ちます。
だからこそ、あらかじめ「しんどい時の取扱説明書」を作っておきます。

連絡が返せない時の定型文
食べやすいものリスト
自分を落ち着かせる方法
支援者・医療者の連絡先
希死念慮が強い時の対応

“過去の自分”から“未来の自分”へのプレゼントです。

5. 頑張るより「やりすぎない」


精神疾患のある人の多くは、実は頑張りすぎる人です。
「迷惑をかけたくない」
「普通でいたい」
「期待に応えたい」

けれど、頑張る=回復ではありません。
むしろ再発のリスクを高めます。

回復は“余力を残す”勇気から始まります。

6. 人との距離感を整える


精神的に不安定な時期は、人と関わるほど疲れることがあります。
距離が近すぎても、遠すぎても疲れる。だからこそ、距離感を自分で調整する必要があります。

深い話は控える
他者の悩みを受けすぎない
連絡を返せない時は無理に返さない

「気力があるときに関わる」「疲れたら戻る」
この柔軟さが長期的な安定につながります。


7. 医療・支援と自分の関わり方を決めておく


精神疾患と付き合ううえで、医療(精神科医・訪問看護・カウンセリング)は大きな支えになります。

ただ、「医療に頼りすぎる」「医療を拒否する」のどちらも極端です。
助けてほしいライン
どこまでは自分で頑張るか
緊急時の対応
自分に合う医師・支援者の条件

これらを言語化しておくと、支援者との関係が“依存”ではなく“協働”に変わります。

8. 希死念慮への対処法を身につける


精神疾患を持つ多くの人が、希死念慮(死にたい気持ち)との付き合い方に苦労します。

希死念慮は“危険な衝動”ではありますが、“助けてほしい”というサインでもあります。

対処法としては、
まずは「否定しない」
感情の波が過ぎるまで“安全時間”を作る
誰かに短文で知らせる(例:今つらい)
危険物を近くに置かない
医療につながるハードルをできるだけ下げておく

希死念慮は“感情の嵐”であって、あなたという人間の全てではありません。

9. 好きなこと・できることをひとつ残す


精神疾患の回復には、
薬や医療だけではなく喜びの体験が不可欠です。
音楽
散歩
ゲーム
料理
動物
カフェ
創作

どれでもいいです。
ひとつだけでも“好き”を残すこと。それがあなたの命綱になることがあります。

10. 調子が良い日は「貯金」ではなく「維持」をする


調子がいい日は、つい「今のうちに色々やらなきゃ!」と思いがちです。

しかし、調子の良い日は、全集中でやりすぎるのではなく、淡々と維持する日にする方が長期的な安定につながります。

回復とは、「調子の良い日を増やすこと」ではなく
悪い日の落差を小さくすること」です。

精神疾患は「治す」ものではなく「整えながら生きる」もの


精神疾患と付き合うというのは、普通の生活を取り戻すこと以上に、自分らしい生活を作り直すことです。

無理をしない
整えながら生きる
波を責めない
弱さを隠さない
助けを求める勇気を持つ

これらはどれも簡単ではありません。
しかし、ピアサポーターとして多くの人を見てきて確信していることがあります。

「ひとりで抱えない人ほど、回復は安定していく」

ひとつずつでいいので取り入れてみるといいと思います。

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