精神疾患からの入院 そして退院後の社会復帰と仕事復帰 ― 社会資源を活用するポイント
看護師 山田祥和
精神疾患で入院を経験すると、退院後の生活や社会復帰への不安はとても大きいものです。しかし、地域には多くの社会資源や制度が整備されており、それらを組み合わせて利用することで、無理のない形で仕事復帰を目指すことができます。
本日は、以前勤務していた病院での経験と、現在の地域支援の経験から、入院→退院、社会参加、就労準備、そして仕事復帰までの流れを整理し、活用できる支援を解説していきます。
入院中 ― 病状安定と退院準備
入院中は休養、薬物療法や心理教育、作業療法などを通じて体調を安定させ、生活リズムを整え、精神的に安定することが目的です。
病状にもよりますが、今は前ほど長い入院はしませんので、すぐに退院の話しが出ます。
退院後に利用できるサービスや制度について、主治医やケースワーカー、担当看護師から説明があります。
退院日が決まったら、まずはどこで生活をするのかを決めます。自宅に戻るのか、親元に戻るのか、グループホームに入居するのかなど。
グループホームに入居する場合は福祉サービスですので相談支援専門員をつけるといいと思います。
住む場所が決まれば、外来通院日を決め、退院後生活が不安でしたら訪問看護をつけるのもいいと思います。
またすぐに仕事復帰ではなく、リハビリを兼ねて通う場所があってもいいです。デイケアや地域活動支援センターなど。
それらの相談は主治医やケースワーカーが乗ってくれます。グループホーム、地域活動支援センター、相談支援専門員などの福祉サービスのことなら保健所わ障害福祉課も乗ってくれます。
デイケアや訪問看護は医療ですので病院のケースワーカーが相談に乗ります。

退院直後 ― 生活基盤を整える
退院直後は体調が安定していても不安が強く、生活リズムが乱れやすい時期です。上にも書きましたが、この段階でよく使われる社会資源を上げます。
定期通院:医師の診察で病状の変化を確認し、再発を防ぐ。
精神科訪問看護:看護師が自宅を訪問し、服薬確認や生活リズム調整を支援、相談相手になる。
グループホーム:一人暮らしが難しい場合に、共同生活を通して生活スキルを身につける。
生活介護:食事・入浴・日中活動を通して安心できる居場所を確保。
地域活動支援センター:趣味や軽作業、交流を通じて社会参加を促す。
相談支援事業所:障害福祉サービスを利用する際に必要な「サービス等利用計画」を作成し、継続的に相談に対応。
保健所・市町村の障害福祉課:障害者手帳、自立支援医療制度、障害福祉サービスの申請窓口となり、制度利用の入口となる。
退院後の生活を安定させるためには、医療・福祉・行政を組み合わせて利用することが重要です。
社会参加へのステップ ― 仲間と交流し自立を広げる
生活が落ち着いてきたら、社会とのつながりを広げていきます。
当事者会(ピアサポート):同じ経験を持つ人と悩みを共有し、安心感や共感を得られる。
デイケア:医療機関でグループ活動や軽作業を通じ、生活リズムや対人関係スキルを養う。
自立訓練(生活訓練):料理・掃除・金銭管理などのスキルを習得し、自立生活に向けて準備する。
これらは「社会に戻る練習」としての大切なステップです。
就労支援 ― 段階的に働く準備
就労を目指す段階では、障害福祉サービスを利用することが一般的です。
就労継続支援B型:体調に合わせて軽作業を行い、働く習慣を整える。
就労継続支援A型:雇用契約を結び、給与を得ながら働く。一般就労に近い環境で経験を積める。
就労移行支援事業所:一般就労を目指すための訓練や就職活動の支援を行う。
相談支援事業所がサービス調整を行い、保健所や市町村の障害福祉課が制度的な支えを担うことで、スムーズな利用につながります。
リワークプログラム ― 職場復帰のために
うつ病や適応障害で休職している場合、リワークプログラムが効果的です。出勤シミュレーションや体力・集中力の回復、ストレス対処スキルの習得を通じて、復職後の再休職を防ぎます。
実際の仕事復帰 ― 無理のないステップを踏む
十分な準備を経たら、いよいよ仕事復帰です。ただし、短時間勤務やリモートワークから段階的に復帰することが望ましいです。
障害者雇用枠を活用する
主治医・支援機関・職場と連携する
定期的に体調を確認しながら働き方を調整する
障がい者雇用枠で働くのなら、ハローワークに行くといいと思います。
こうした工夫が、安定した職場定着につながります。

まとめ ― 行政と地域資源を組み合わせて社会復帰へ
精神疾患からの社会復帰・仕事復帰は、
1. 入院での治療と安定化
2. 退院後の生活基盤づくり(通院・訪問看護・グループホーム・生活介護・地域活動支援センター・相談支援事業所・保健所や市町村の障害福祉課)
3. デイケアや自立訓練、当事者会での社会参加
4. A型・B型、就労移行支援事業所での就労準備
5. リワークプログラムでの復職支援
6. 段階的な仕事復帰
という流れで進められます。
行政窓口(保健所や市町村の障害福祉課)と地域の社会資源をつなげることで、安心して社会復帰を目指すことができます。精神科訪問看護や相談支援事業所も含め、支援を組み合わせることこそが社会復帰成功のカギとなります。