パニック障害 家族の支え方と境界線 〜過干渉にならず安心感を与える方法から

看護師 山田祥和

パニック障害と家族の関わり方の重要性


パニック障害は、突然のパニック発作や「また発作が起こるのでは」という予期不安によって、外出や日常生活に大きな制限がかかる病気です。

このとき家族の支えは非常に重要ですが、「支え方」と「距離感(境界線)」を誤ると、回復を妨げてしまうことがあります。

特に過干渉は、本人の自立心を奪い、依存状態を長引かせる原因になり得ます。

本日は、私がこれまで見てきた適切な距離と家族ができる正しいサポート方法、過干渉にならないための境界線の引き方を書いていきます。



なぜ境界線が必要なのか


支えすぎは回復を妨げるからです。

パニック障害の当事者は、「症状が出るかもしれない」という予期不安や「迷惑をかけるかもしれない」という罪悪感を抱えています。

ここで家族が先回りして全てをやってしまうと、本人は「自分は何もできない」という感覚を強めてしまいます。
そして家族なくして何もできない状態になってしまいます。家族も疲れ切ってしまい、共倒れになるケースもあります。

放置しすぎも逆効果

逆に、放任しすぎると「理解してもらえていない」という孤独感や不安感が強まり、症状が悪化する可能性もあります。
境界線を保ちながら支えることが、安心感と回復の両立につながります。

家族が過干渉になりやすいパターン

発作が怖いからと外出や活動を禁止する
全て家にいながら完結するように助けてしまう
本人がやろうとしたことをすぐに代わってしまう
何度も「大丈夫?」と過剰に確認する
本人より家族の判断を優先する

これらは一見すると優しさですが、本人の自己効力感を奪う行動です。
よく家族が「私が何とかしなくては」「私がいなくてはダメなんだ」と背負ってしまうことがあります。
無意識に共依存関係ができ上がってしまいます。

安心感を与える支え方の基本


1. 否定せず受け止める
パニック障害の不安や症状の訴えを「大丈夫だよ」や「何でもないよ」、「死にはしない!」と否定せず、
「そう感じているんだね」、「辛いね」と受け止めることで、安心感が生まれます。

2. 発作時の対応を事前に話し合う
「水を持ってきてほしい」「静かに見守ってほしい」「背中を摩って欲しい」など、本人の希望を事前に共有しておくと、発作時の混乱を防げます。

3. 小さな成功を一緒に喜ぶ
外出時間を少し伸ばせた、1人で買い物ができたなど、小さな前進を肯定的に伝えることが回復意欲を高めます。
スモールステップが一番効果的です。



家族が取るべきサポートのステップ
1. 現状を受け入れる
無理に行動を促さず、現在の状態を理解する。
2. 本人の希望を確認する
何をしてほしいか、何を自分でやりたいかを明確にする。
3. 段階的に自立を促す
少しずつ行動範囲や役割を広げる。
4. 専門家と連携する
医師や支援者と情報共有し、家族だけで抱え込まないようにする。



家族自身のケアも忘れない


支える家族も疲れやすく、ストレスや不眠になることがあります。家族が元気でいる必要があるためにも、
家族会や当事者会に参加する
趣味や休養時間、一人の時間を確保する
カウンセリングの活用

家族の健康があってこそ、長期的なサポートが可能になります。

境界線を保ちながら支えるコツ

1.本人の行動を完全に管理しない
2.できることは本人に任せる
3.発作や失敗を過剰に恐れない
4.「助けること」と「助けすぎること」を混同しない

まとめ


パニック障害の家族関係において、本人たちも意識しないうちに、家族がいなくてはならない共依存の関係が出来上がってしまうことがあります。

そうならないためにも家族は安心感を与えることと過干渉を避けることのバランスが重要です。

最終的な目標は、本人が「自分の生活を自分でコントロールできる」という感覚を取り戻すことです。

家族は伴走者として適切な距離感を保ちながら寄り添うことが、回復への近道です。

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