風呂キャンしたくなる心理状態とみんながやっている風呂キャン対策
看護師 山田祥和
うつ病の人は入浴をこのように表現します。
「お風呂への道のりが荒く険しく、大きな壁が立ちはだかっている」と。
うつではない時はなんでもない入浴が、うつになると一大イベントになるのです。
「今日はもう無理」「明日でいいや」そう思いながら、気づけば何日もお風呂に入れていない。ひどいと数カ月、年単位になることも。
いわゆる風呂キャン(風呂キャンセル)。
SNSでは「風呂キャン界隈」という言葉も広がり、
実は多くの人が同じことで悩んでいるのが現実です。
私もこれまで、入浴に苦しんできた人を多くみてきました。本日は、なぜ風呂キャンしたくなるのか、そのとき心と体で何が起きているのか、皆さんが実際にやっている現実的な対策を、精神科・生活支援の視点も交えながら整理していきます。

風呂キャンしたくなるのは「怠け」ではない
まず大事な前提として、風呂に入れない=だらしないではありません。
むしろ、次のような状態が重なっていることが多いです。
よくある心理状態として、すでにエネルギーが枯渇している、何か一つやると全部やらなきゃいけない感覚、服を脱ぐ・洗う・乾かす工程を想像して疲れる、体を触る/見ること自体がしんどい、「ちゃんと入れない自分」への自己嫌悪などなど。
特にうつ状態や発達特性・強い不安があると、お風呂は「リラックス」ではなく高難度タスクになります。
風呂は「複合タスク」だから重い
お風呂は一見シンプルですが、脳にとってはかなり負荷が高い行動です。
お風呂を洗う
湯を入れる
温度を調整する
服を脱ぐ
体を洗う
髪を洗う
湯に浸かる
拭く
着替える
ドライヤーをかける
洗濯
これを一気に完璧にやろうとすると、エネルギーが残っていない日は詰みます。
だから風呂キャンは「意思が弱い」ではなく、現実的な自己防衛反応でもあるのです。
調子がいい時は、むしろお風呂に入らないなんて信じられませんが、いざ不調になると入れません。
みんながやっている風呂キャン対策
では、ここからは実際にみなさんが取り入れている風呂キャン対策です。
1. 「今日は全部やらない」と決める
湯船は入らない
髪は洗わない
体だけ流す
100点を捨てて30点でOKにすると、ハードルが一気に下がります。
2. 時間を決めない
「何分入る」「何時までに」これを決めると逆に動けなくなります。
立ったままシャワーだけ
1分で出てもOKなどと考え、ハードルを下げます。
途中でやめても失敗じゃないと決めておくのがコツです。
3. 代替ケアを用意する
どうしても無理な日は、次で十分なこともあります。
体拭きシート
ドライシャンプー
顔だけ洗う
化粧だけ落とす
下着だけ替える
「入れなかった日=ゼロ」ではありません。
4. 入る理由を「気持ちよさ」にしない
「リラックスしよう」「スッキリしよう」と考えると重くなります。
代わりに
皮膚トラブル予防
かゆみ対策
明日の自分が少し楽
目的を超現実的にすると動きやすくなります。
5. 人の手・仕組みを使う
家族に背中を押してもらう
訪問看護やヘルパーの声かけ
一緒に入る時間を決めてもらう
入浴介助や見守り
「一人でできない=失格」ではありません。
支援を使えることも生活力です。

それでも入れない日がある
どんな対策をしても、どうしても無理な日はあります。
そんな日は責めない、挽回しようとしない、明日の自分に丸投げする
これが一番ダメージが少ないです。
風呂キャンが続くときは、心や体が「もう限界」とサインを出している可能性もあります。
風呂キャンは状態のサイン
風呂キャンは甘えや怠けや性格の問題ではなく、今の状態を映す鏡です。
「今日はお風呂に入りたくないなー」と思ったら、それは不調のサインなのかもしれません。風呂キャンを自分の状態把握の指標と考えてもいいかもしれません。
対策の目的は「毎日ちゃんと入ること」ではなく、
生活を壊さないこと。
できる日も、できない日も含めて、「いつか入れるだろう」くらいの軽い気持ちでいた方がいいですね。

