マインドフルネスの活用法 辛いときに使えるマインドフルネス

看護師 山田祥和

私たちは普段「落ち着きたい」「不安をどうにかしたい」と思いながらも、いざ強烈な不安やパニックが襲ってきたとき、頭が真っ白になってしまい、普段の対処を思い出せないことがあります。

そんな緊急の瞬間にも使えるのが、短時間で働くマインドフルネス(今ここに戻る技法)です。

本日は、マインドフルネスの活用法を状態別に「何が起きているのか」「どう使うか」「実際の手順」としてまとめました。

1.頭が真っ白になったとき

①どんな状態?
脳が戦うか逃げるか(Fight or Flight)モードに入り、前頭葉の働きが低下しています。
思考・判断が止まり、体がフリーズしているような状態です。

②この状態に役立つマインドフルネス
「3呼吸グラウンディング」
もっとも短く、最初に取り組むべきスキルです。

④やり方
1)鼻からゆっくり吸う(2秒)
2)口から長めに吐く(4秒)
3)吐き終わりに、お腹の動きを“ひとつだけ”観察する
4)これを3回だけ行います。

➡ たった20秒で思考のスイッチを戻しやすくなります。

2.パニック発作が出そう/出ているとき

①どんな状態?
自律神経が暴走し、「死ぬかもしれない」という誤作動が起きている状態です。

②この状態に役立つマインドフルネス
「5・4・3・2・1 グラウンディング(五感法)」

意識が未来の不安に飛んでいるのを 「今ここ」 に引き戻す方法です。

③やり方
1)見えるものを5つ、心の中で言う
2)触れているものを4つ
3)聞こえる音を3つ
4)匂いを2つ
5)味を1つ

➡ パニックの暴走を止める「アンカー(錨)」になります。

3.強迫観念が強まったとき

①どんな状態?
「不安を消すために行動しなければ」という脳の誤作動が起きています。
思考を抑えようとすると逆に強まる特徴があります。

②役立つマインドフルネス
「雲に流すワーク(思考の距離をとる)」

③やり方
1)心に浮かんだ強迫的な思考を“雲の上に置く”イメージ
2)その雲が通り過ぎていくのを眺める
3)思考を消そうとしない(ただ流れるのを見るだけ)

➡ 思考と自分は別物と感じられ、強迫の勢いが弱まっていきます。

4.希死念慮が出てきたとき

安全確保が最優先です。
訪問看護でもよくお伝えする緊急時のマインドフルネスの形です。

①どんな状態?
思考がネガティブで支配され、未来が極端に狭く見えてしまう状態です。

②役立つマインドフルネス
「足裏グラウンディング(身体優位に戻す)」

③やり方
1)椅子に座り、足の裏だけ に意識を向ける
2)「温かい/冷たい」「ザラザラする」「重さがある」など
3)ラベルづけしながら3呼吸続ける
4)終わったら視界を少し広げる

➡ 考えすぎている状態を、身体から“今ここに”に戻していきます。

④補足
希死念慮が出ている時は、独りで抱えず、看護師・家族・支援者へすぐ共有。24時間対応の相談窓口を利用することも重要です。

※マインドフルネスはあくまで「症状を少し弱める補助ツール」と捉えてください。


5.突然の強い不安に襲われたとき


①どんな状態?
不安は「未来の危険を予測して暴走している状態」。
実際の危険とは一致しないことが多いです。

②役立つマインドフルネス
「10秒の身体スキャン」

③やり方
1)顔 → 肩 → 胸 → 手 → お腹 → 足
 の順に、「今どうなっているか」をただ観察
2)変えようとしない
3)ラベルづけはシンプルに
例:「重い」「あたたかい」「動いている」

➡ 体の「今」に注意が戻り、不安の暴走が止まりやすくなります。

最後に

マインドフルネスは「症状をゼロにする魔法」ではありません。
でも、その瞬間の苦しさを“10 → 5”に下げる力があります。

そしてその“5の余白”が、
誰かに助けを求める
安全を確保する
自分を傷つけない選択をする
ための冷静さにつながります。

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