「人はどうしてこころを病むのか」を考えてみた②

看護師 山田祥和

こころの病の進化的意義

人は生きやすいように進化しているのに、こころの病はなくなりません。

こころの病は必要なのでしょうか?

こころの病は、日常生活を困難にする一方で、もしかすると人類の生存に関わる何らかの役割を担っているのかもしれません。

一部の研究者は、精神疾患が極限状況において重要な役割を果たす可能性を指摘しています。

たとえば、不安は危険を回避するための防衛本能として機能することがあります。気分の落ち込みは、外部からの刺激を遮断し、内省や問題解決のための時間を確保する役割を持つとも考えられています。

溺れたマウスに、抗うつ薬を使って頑張って泳ぎ続けたマウスと、うつ状態で抗わないでぷかぷか浮き続けたマウスとでは後者の方が長く生き続けることができます。

また、大きな災害や非常事態に直面したとき、精神の敏感さが危機を察知し、他者との協力や新しい環境への適応を促すきっかけとなることもあるでしょう。

危機的状況下では、「大丈夫、大丈夫、何とかなるさ」と思っている人が真っ先に、何とかならないなんてことも考えられます。

不安や緊張は慎重につながります。

つまり、心の病は短期的には「生きにくさ」をもたらすものの、長い目で見れば人類の存続や進化に必要な要素である可能性があります。

それでも「生きにくい」現代社会

しかし、現代社会においては、心の病が生存を助けるよりも「生きにくさ」の原因となることが多いのも事実です。

高度に発展した社会構造や、絶え間ない情報の流入、人間関係の複雑化が、こころに過剰な負担をかけているのかもしれません。

便利さを追求する進化の中で、人類はこころのケアを軽視してしまったのではないでしょうか。

これからの進化とこころ

これからの時代、人類は物質的な進化だけでなく、こころの健康を支える進化にも目を向ける必要があります。

心理学や精神医学の研究が進み、心の病を抱える人々にとってより良い支援が提供される社会を目指すべきです。

また、個々人が自分のこころに耳を傾け、必要な助けを求めることが当たり前となる文化を築いていくことが重要です。

人類は進化の中でこころの病を抱えつつも、それを克服し、より豊かな未来を築く力を持っています。

それは、私たちが互いに支え合い、心と体のバランスを保ちながら進んでいくことにかかっています。こころの進化を追求することは、次なる人類の課題と言えるでしょう。少し大袈裟だったかもしれません。

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