不登校支援 学校に行くことが目標じゃない 不登校は「生きるための選択」

看護師 増井さやか

保護者が抱える不安と問い


我が子が不登校になったとき、多くの保護者は「なぜ?」と理由を問い詰め、原因を究明し、復学に向けたアプローチを始めます。実際、不登校に関する親の会に参加する保護者の多くは、「この現状を何とかしたい」と強い思いで行動されています。その一環として親の会に参加し、「どうしたら登校できるのでしょうか」と涙ながらに訴える姿も見られます。

自責と他責のはざまで


「子育てを手抜きしたからでは」「親として失格では」「学校や担任が悪いのでは」「友達にいじめられているのでは」など、自分や他者を責める声も少なくありません。

危機モデルから見る心の動き


フィンクの危機モデルでは、「衝撃(強い不安)→防御的対抗(他者批判)→承認(自責の念)→適応(受容・前向き)」の4段階を経るとされ、不登校の当事者も保護者も、この段階を行きつ戻りつしながら進んでいきます。保護者自身が「今、どの段階にいるのか」を意識することで、自分自身を客観的に見つめることができます。

不登校は「生きるための選択」


まずは、我が子が「不登校を選んだこと」を肯定してください。原因を追及したい気持ちはぐっとこらえ、日常の中で何気ない雑談を大切にしてほしいのです。不登校は、命を断つ選択ではなく、「生きるための選択」です。社会という大きな集団に、今は適応していないだけ。まずは、家庭という小さな社会の中で安心して過ごせる環境を整えてください。

家庭の安心が次の一歩を生む


家庭が居心地のよい場所になれば、子どもはやがて自らの力で家庭外の社会に踏み出していけます。2023年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳。不登校はその長い人生の中の、ほんの一時期にすぎません。自分自身と向き合う、大切な時間でもあります。

二次障害を防ぐことの重要性


そして、不登校の子どもが二次障害を抱えないようにすることが何より重要です。保護者も精神的に疲弊してしまうことがあります。そんなとき、寄り添い伴走する存在として訪問看護があります。

訪問看護の役割


「親には話せないけれど、訪問看護師には話せる」という子どもも少なくありません。不登校の時期を安心して過ごすためにも、訪問看護は非常に相性のよい支援の一つです。

多様な学びの選択肢


現在は、フリースクールや通信制高校など、多様な学びの場が存在します。その子が一歩を踏み出したとき、自分らしく過ごせる場所を選べる時代が来ています。

まとめ


不登校は失敗でも後退でもなく、「生きるための選択」です。保護者が原因追及や自己批判にとらわれすぎず、まずは家庭を安心できる居場所に整えることが大切です。その安心が、子どもが次の一歩を踏み出すための土台になります。

また、子どもと保護者が心身ともに疲弊しないよう、訪問看護など外部の専門職の支援を積極的に取り入れることも有効です。学校に行くことだけがゴールではありません。多様な学びの場や社会とのつながりを見据えながら、子ども自身が自分らしい未来を歩んでいけるように支えて行くことが大切だと考えます。

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