兄弟姉妹が感じる不登校 家族全体への影響と支援のあり方

看護師 山田 祥和

はじめに


不登校の問題は、本人と親の関わりに注目されることが多いですが、実は「兄弟姉妹」もまた大きな影響を受けています。

親の関心が不登校の子に集中することで、見過ごされがちな兄弟姉妹の気持ち。寂しさ、プレッシャー、時には怒りや罪悪感といった複雑な感情を抱えることがあります。

本記事では、実際の体験談も交えながら、不登校が兄弟姉妹や家族全体に与える影響、そしてその支援のあり方について考えます。



兄弟姉妹が抱える心理的影響

1. 親の関心が偏ることによる寂しさ


中学2年の弟が不登校になったAさん(高校生)はこう語ります。
「母は毎朝、弟を起こすのに必死で、私のことは後回し。学校のことを相談したい気持ちがあっても、『ちょっと待って』と言われ続けて、だんだん話さなくなりました。」
このように、兄弟姉妹は「自分は見てもらえない」という寂しさを感じやすくなります。

2. 比較されることによるプレッシャー


小学生の妹が不登校になったBさん(中学生)は、「あなただけはちゃんと学校に行ってね」と言われ続けたといいます。一見励ましに見える言葉も、「失敗してはいけない」という大きなプレッシャーになります。

3. 複雑な感情と罪悪感


「どうして学校に行かないの?」と不登校のきょうだいに苛立ちをぶつけてしまい、後から罪悪感を抱く子も少なくありません。支えたい気持ちと同時に、怒りや戸惑いも混ざり合い、心の中で葛藤を抱えるのです。

私たちはご本人以外に両親も、そして兄弟・姉妹にも気を配るようにしています。

家族全体に及ぶ影響

1. 家庭内の雰囲気が変わる


不登校をめぐって朝から口論が絶えない家庭もあります。Cさん(兄が不登校)は「毎朝のケンカで家全体がピリピリしていて、家にいても休まらない」と話します。こうした雰囲気の変化は兄弟姉妹の安心感を奪い、心身に影響を与えます。

2. 親のストレスと兄弟姉妹への影響


親がストレスを抱えすぎると、兄弟姉妹への対応がおろそかになりやすくなります。結果として「自分も問題を起こさないようにしなきゃ」と過剰に気を遣い、心に負担を溜めてしまうことがあります。

3. 社会的活動の制限


「兄が外に出られないから」と旅行や外食を控える家庭もあります。その結果、兄弟姉妹は楽しみを奪われたと感じ、「自分まで我慢している」という不満を持つケースがあります。



支援と工夫 ― 兄弟姉妹を守るために

1. 個別に関わる時間を持つ


不登校の子への対応に追われても、兄弟姉妹と一対一で向き合う時間を持つことが大切です。「一緒に散歩に行こう」「買い物に付き合って」といった小さな関わりが安心感につながります。

2. 気持ちを言葉にさせる


「弟が学校に行かなくて恥ずかしい」「どうして自分ばかり我慢しなきゃいけないの?」――こうした気持ちを安心して吐き出せる場を用意することが必要です。親だけで難しければ、スクールカウンセラーや信頼できる大人に話せる環境を整えることも有効です。

3. 外部の支援を利用する


地域のフリースクール、NPO、カウンセリング、外に出られないならオンラインカウンセリングや精神科訪問看護など、第三者の関わりは、本人だけでなく兄弟姉妹のケアにも役立ちます。Dさん(妹が不登校)は「親に言えなかった気持ちを先生に聞いてもらえて楽になった」と話しています。

4. 家族全体でのバランスを意識する


不登校の支援は子ども本人に目が行きがちですが、家族全員のバランスが重要です。親がリフレッシュする時間を持つことも、兄弟姉妹を守るために必要なことです。

まとめ


不登校は本人だけの課題ではなく、兄弟姉妹や家族全体に影響を及ぼす問題です。兄弟姉妹は親の関心の偏りや比較、家庭内の緊張感によって心に負担を抱えがちです。しかし、体験談が示すように「小さな関わり」「安心して話せる場」「外部の支援」を取り入れることで、家族全体のバランスを取り戻すことが可能です。

不登校の支援を考えるときには、ぜひ兄弟姉妹も含めて「家族全員が安心できる環境づくり」を意識してください。それが最終的に、不登校の子ども自身の回復にもつながる大切な一歩となります。

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