不登校で親が自分を責めてしまう心理 「育て方が悪かったのでは」と苦しむ親へ伝えたいこと
看護師 山田祥和
子どもが不登校になると、多くの親御さんが強い不安と戸惑いを抱えます。
そしてその不安は、次第に「自分を責める気持ち」へと変わっていくことが少なくありません。
訪問看護の現場でも、「自分の育て方が悪かったのではないか」「もっと早く気づいてあげられたら防げたのではないか」「ちゃんとした親であれば、こんなことにはならなかったのではないか」という声を聞くことは珍しくありません。
不登校の相談を受けていると、こうした言葉を日常的に耳にします。子ども以上に、親自身が深く追い詰められているケースは決して珍しくないのです。
本日は、不登校に直面したときに親が自分を責めてしまう心理を丁寧に整理し、その苦しさが少しでも和らぐ視点をお伝えします。

不登校になると親は強い「理由探し」に巻き込まれる
不登校は、原因が一つに特定できるものではありません。学校での人間関係、先生との相性、本人の特性、体調の変化、家庭内の雰囲気など、さまざまな要素が複雑に絡み合って起こります。
しかし原因がはっきりしない状態は、親にとって非常に不安なものです。
この先どうすればいいのか分からない。
学校に行けなければ一生終わりではないか。
また同じことが起きるのではないか。
その不安に耐えられなくなったとき、人は理由を求め始めます。
そして最も身近で、説明しやすい理由として選ばれやすいのが「自分のせいではないか」という考えです。
自分を責めることは、必死に状況を理解しようとする心の動き
親が自分を責めてしまうのは、決して弱さや無責任さからではありません。
むしろ、何とかこの状況を理解したい、立て直したいという必死な思いが背景にあります。
自分の育て方が原因だと考えれば、反省すれば変えられるかもしれない。
次は失敗しないようにできるかもしれない。
そう感じることで、少しだけ状況をコントロールできているような感覚を得られるのです。
それは、混乱の中で親が踏ん張ろうとしている証でもあります。
「親の責任」という価値観が自責を強めてしまう
不登校で親が自分を責めやすい背景には、日本社会に根強く残る価値観も影響しています。
子どもは親の育て方で決まる。
母親の関わり方が大切。
家庭環境に問題があるのではないか。
こうした言葉を直接向けられた経験がなくても、多くの親は無意識のうちに刷り込まれています。
そのため不登校になると、ちゃんとした親ではなかった証拠のように感じてしまい、強い罪悪感を抱えてしまうのです。
「育て方が悪い!」
実際、自分の親や姑、ママ友にそう言われた経験がある方も多いです。
親が自分を責め続けることで起こりやすい変化
自分を責め続ける状態は、親の心と体に大きな負担をかけます。
常に焦りや不安が強くなり、子どもの言動に過敏になりやすくなります。
何とかしなければという思いが強まり、気持ちに余裕がなくなっていきます。
家庭の中の空気も、知らず知らずのうちに張り詰めていきます。
子どもはその変化をとても敏感に感じ取ります。
親の苦しさを感じることで、自分が親を困らせている存在だと思い込み、さらに自分を責めてしまう子もいます。
不登校は親の失敗や愛情不足ではない
ここで、はっきりとお伝えしたいことがあります。
不登校は、親の失敗や愛情不足の結果ではありません。
多くの場合、不登校は「今の環境やペースがその子に合っていない」というサインです。
真面目で我慢強い子ほど、限界まで耐えた末に不登校になることもあります。
それは親が間違えたからではなく、目に見えない負荷が長い時間をかけて積み重なった結果です。

ここまで悩んでいる時点で、親は十分向き合っている
情報を探し続け、関わり方に悩み、子どもの様子を気にかけている。
それだけ悩んでいるという事実は、すでに真剣に向き合っている証拠です。
本当に無関心な親であれば、ここまで苦しむことはありません。
自分を責めている親ほど、実は子どものことを大切に思っています。
親が少し楽になることは、子どもの回復につながる
不登校に対して、すぐに正解を出す必要はありません。
今日だけは自分を責めるのをやめてみる。
分からないと認めてみる。
誰かに話してみる。
親が少し楽になることで、家庭の空気は変わります。
その安心感は、子どもにとって回復の土台になります。
親も支えられていい存在
不登校は、親子のどちらかが悪い問題ではありません。
一緒に立ち止まり、環境や関わり方を整え直していく過程です。
親が限界まで一人で抱え込む必要はありません。
支援や相談を利用することは逃げではなく、前に進むための選択です。
親が守られることは、結果的に子どもを守ることにもつながります。

