不登校支援を初めて担当して気づいたこと 「焦らせない」「比べない」「否定しない」
看護師 山田瑞枝
私は訪問看護ステーションこころいKで、約5年前から「不登校」の支援も行っています。精神疾患や障害のある方の支援はそれまでの数多く経験してきましたが、不登校支援は初めてでした。
不登校支援を行なって実感したことは、子どもが学校に行けなくなる背景には、想像以上に繊細なこころの変化と家族の深い葛藤があることです。
訪問という形で子どものいる家庭に入ると、玄関の空気の重さや、家族がどこかに力を入れている様子、子どもの小さな声のトーンから、言葉にしないメッセージがたくさん伝わってきます。
「この子、どれだけがんばってきたんだろう」
「家族はどれだけ悩んできたんだろう」
そう思わずにはいられませんでした。

子どもが抱えていたのは怠けではなく限界だった
初めて支援に入った子(記事にするにあたり、当然許可を取っていて、個人が特定されないように脚色しています)は、明るくて人懐っこい性格でした。
しかし学校に行こうとすると腹痛が出たり、朝になると強い不安で固まってしまったり、身体がまるで学校を拒否している状態になっていました。
不登校は、怠けているわけではありません。
子どもは、ずっとがんばってきた結果として「もう無理です」というSOSを身体で出しているのだと、この支援を通してはっきりと感じました。
人間関係の疲労、発達特性による生きづらさ、学校のペースに合わせるしんどさ、自己肯定感の低下などなど。
その子の背景には、いくつもの負担が重なっていました。
私自身不登校を経験したわけでもなく、私の子どもたちも不登校ではありませんでしたので、その心理に触れることはありませんでした。
家族もまた深く傷ついていた
支援をしてみて痛感したのは、家族も同じくらい苦しんでいるということです。
どう接していいか分からない
無理に学校へ行かせるべきか悩む
家族の空気が重くなっていく
「将来はどうなるの?」という不安が頭から離れない
不登校は、子どもだけの問題ではなく家族全体の問題として現れます。
特に母親は、「私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めて涙する場面もありました。
その姿を前に、私は「この家族の孤独に寄り添いたい」と強く思いました。
訪問看護だからできた “安心の関係作り”
訪問看護は、子どもが外に出られなくても、家族が支援の場に行けなくても、家まで行けるという大きなメリットがあります。
初回の訪問では、その子は部屋の奥から小さ「こんにちは」と言っただけでした。
私は、無理に近づかず、否定も指導もしませんでした。ただ、「ここは安心していい場所だよ」という雰囲気をつくることだけを心がけました。
4回、5回と訪問を重ねるうちに、ソファに座って話せるようになり、好きなゲームの話をしてくれるようになり、少しずつ表情に明るさが戻っていくのを感じました。
不登校支援の第一歩は、安心して呼吸できる大人になること。
これは訪問看護だからこそ、丁寧に築ける関係だと思います。
発達特性が背景にある子どもは多い
不登校支援を通して感じることは、診断の有無に関わらず、発達特性が不登校につながるケースがとても多いということです。
・集団が苦手
・音や人の多さに疲れやすい
・予定変更が苦手
・勉強が分からないまま置いていかれる
・人間関係の距離感が難しい
その特性を“努力不足”として扱ってしまうと、子どもはさらに追い詰められます。
私は、その子の特性を理解し、安心できる説明やスモールステップを一緒に考えていきました。
すると、子どもは少しずつ「自分はできるかもしれない」という感覚を取り戻していきました。

家族支援も訪問看護の大切な役割
不登校は、家族の孤立を生みやすい問題です。
訪問看護では、子どもの支援と同じくらい、家族の気持ちに寄り添うことを意識しました。
無理に登校を促さない方がいい時期なのか一緒に考え、家庭での声かけのポイントを整理したり、医療機関や相談機関との連携も行いました。
母親・父親が元気になることも意識しました。
「誰かに相談できる」というだけで、家族は少し呼吸が楽になります。
不登校支援は“未来を閉ざす”ものではない
支援に関わる中で強く思うのは、不登校は、子どもの未来を奪うものではないということです。
むしろ、自分に合う学び方を見つけたり、自分らしい強みを発見したり、じっくり心を回復させたりする期間です。
その子に必要な“人生の調整期間”になることも多いのです。
訪問看護ステーションこころいKとして、私は、「焦らせない」「比べない」「否定しない」
この3つを大切に、不登校支援に関わっていきたいと思っています。
まとめ
不登校支援を行なって感じたのは、子どもの苦しみと家族の不安は、想像以上に深いということ。
しかし同時に、安心できる関係と、小さな成功体験があれば、子どもは必ず前に進めるという確信も持ちました。
訪問看護ステーションこころいKでは、子どもと家族の「安心できる居場所」として、これからも地域とつながりながら支援を続けていきます。


