統合失調症の息子を持つ母親の苦悩と希望③ 統合失調症の回復は静かに進む
看護師 山田祥和
前回の続きです。
統合失調症の息子さんを持つお母さんの話です。当事者家族の役に立てばと、お母さんはぜひ本当のことを書いて欲しいとのことですが、個人が特定されないように脚色して書いています。
前回までの記事です。
退院後の不安と「また元に戻るのでは」という恐怖
入院すると、薬物療法の効果かみるみるよくなっていきました。
面会で会うたびに良くなっていくのが感じられました。以前のように怯えていなく、イライラしている様子もありません。
発症前の穏やかな息子です。20年ぶりです。
1ヶ月ほどで退院の話が出て、もう半月したら退院が決まりました。
ですが、お母さんは正直戸惑ったそうです。
「また同じ生活に戻るのではないか」
「薬を飲まなくなったらどうしよう」
「私がまた一人で抱えることになるのではないか」
「近所の人はどう思っているのだろう」
退院後の生活は、家族にとっても大きな不安材料です。20年という長い年月1人で抱えてきたのですから当然です。

回復は「静かに、ゆっくり」と始まった
しかし、予想と反して、退院すると本人の様子は大きく違いました。退院と同時に訪問看護が導入され、私が関わるようになりました。
退院後、息子さんの生活は、劇的に変わったわけではありませんでした。
映画のように、突然社会参加してすべてが解決したりしたわけではありません。
むしろ、回復はとても静かで、周囲からは分かりにくいものでした。
薬物治療が始まり、被害妄想は少しずつ和らいでいきました。
「監視されている」という確信は薄れ、怒りの爆発も減っていきました。
一方で、強い眠気やだるさ、意欲の低下といった副作用や陰性症状もあり、以前とは違った意味で外に出ることはできませんでした。
お母さんは言います。
「よくなったのか、悪くなったのか、正直わからなかった」
でも、確実に一つだけ違っていたことがあります。
よく寝て、平穏になったこと。夜が静かになったこと。
それだけで、家庭の空気は大きく変わりました。
「普通」を求めないという選択
本人の訪問看護の受け入れは、何とかなく始まり、徐々に関係性ができてきました。
アニメの話、サッカーの話、音楽の話、、、
精神状態の確認、お薬の飲み心地、体調の確認、本人が好きなギター一緒に弾いたり、ウィニングイレブンを一緒にプレイしたりしました。

そして何より、その支援は息子さんだけではなく、お母さんにも及びます。お母さんが一人で抱え込まないようにお母さんの話を聴きました。
以前のお母さんは、こう思っていました。
「私に何かあっても一人で生きていけるように」
「社会に出て出られるように、働けるようにしなきゃ」
「少なくても普通の生活をさせなきゃ」
でも、その考えは少しずつ変わっていったと言います。
「元に戻らなくていい」
「できない日があってもいい」
「今日は穏やかだった、それでいい」
回復とは、失ったものを取り戻すことではなく、今の状態で生きていける形を整えることでもあります。
次回最終回
発症から20年、現在の状況です。

