医療・福祉との違いと当事者性の強み 精神科ピアサポーターが地域で果たす役割

ピアサポーター K

1.専門職だけでは届かないこころの隙間


精神科医療や福祉の制度は進化し、私たちが住んでいる地域でも、支援体制は広がっています。医師や看護師、相談支援専門員など、専門職による支援は明確な基盤となっています。

しかし、制度や技術の枠組みだけでは受け止めきれない気持ちや、不安の置き場がないまま日々を過ごしている人は少なくありません。その隙間を温かく満たす存在として、精神科ピアサポーターの必要性が高まっています。

2.医療・福祉が支えているものと、そこに生まれる壁


医療は病状の評価、治療、安全の確保を中心とし、福祉は生活支援や制度調整を担います。どちらも欠かせない役割ですが、どうしても専門職と利用者という構図が生まれ、相手に本音を伝えにくい空気が漂うことがあります。

正しく話さなければならない、迷惑をかけたくない、怒られるかもしれないという不安の中で、心の深い部分は隠れてしまうことも少なくありません。

3.当事者性という唯一の専門性


ピアサポーターには、自らが病気や生きづらさを経験してきたという強みがあります。症状に振り回された日々、眠れない夜の不安、家族関係の葛藤、就労や学校に戻るまでの苦労、薬への複雑な思い。こうした体験そのものが専門性となり、支援に直結します。

経験してきたからこそ、相手の表情や声のトーンだけで、言葉にならない気持ちを感じ取ることができます。しんどさを説明しなくても伝わるという安心感は、他の専門職には再現が難しい領域です。こころから分かるという共感は、当事者性の持つ最大の強みです。

4.生きた回復を示すことで生まれる希望


ピアサポーターの姿そのものが回復の証となり、相手に未来のイメージを与えます。病気があっても働ける、生活を工夫しながら続けていける、人間関係も少しずつ改善できる、失敗してもやり直せる。そうした姿は、言葉以上に説得力があります。

専門職の励ましより、同じ道を歩いた人の言葉が心にまっすぐ届くことは多く、その言葉は希望の灯のような役割を果たします。

5.安心して話せる横並びの関係をつくる力


支援者に弱い部分を見せるのは、誰にとっても勇気のいることです。医療や福祉の専門職にはどうしても距離があり、緊張や遠慮が生まれます。

しかし、ピアサポーターは同じ経験を持つ仲間という感覚で接するため、上下関係が生まれにくく、安心して弱音を話すことができます。

薬への迷い、再発の不安、生活のしんどさ、人に言いにくい症状。こうした内容を自然に語れるのは、横に並んで歩く感覚をつくれるピアの力によるものです。

6.医療と福祉をつなぐ本音の橋渡し役


ピアサポーターが間に入ることで、利用者が医療や福祉には言えなかった本音が、チームに自然と伝わることがあります。診察では話せなかった気持ち、家族にも打ち明けられなかった不安、福祉の場では表現できない生活のつらさ。そうした声をピアが受け止めることで、必要な情報が専門職側に届き、支援の質が一段と向上します。

訪問看護での同行や家族支援、当事者会の活動、学校や行政との関係調整でも、ピアの視点が加わると見えてくる世界が増え、支援がより立体的になります。

7.当事者性の限界と、チームで支える意味


当事者性には強みがある一方で、限界も存在します。自身の経験に重ねすぎてしまうこと、相手の気持ちに引きずられて疲れてしまうこと、医療的判断が必要な場面には対応できないことなど、ピアだけで支えるのが難しい状況もあります。

だからこそ、医療、福祉、ピアがそれぞれの役割を認め合い、互いの強みを活かすことが大切です。寄り添う力、安全を守る力、制度につなぐ力がそろって初めて、地域の支援が豊かに回り始めます。

8.経験は力になる──地域で求められるピアサポートの未来


精神科ピアサポーターは、かつての苦しみを力に変えて、人を支える存在です。生きづらさを経験したからこそ届けられる言葉があり、寄り添える場所があります。医療でも福祉でもない第三の支援として、地域で求められる理由がここにあります。

経験は弱さではなく、誰かを支える力に変えられる。
そのことを体現しているのが、精神科ピアサポーターという存在です。

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