海外と日本の発達障害支援の違い 個人主義と協調性の文化から考える
看護師 山田祥和
はじめに
先日、発達障害の支援は海外ではどうしているのかを調べてみたところ、日本と海外ではそのアプローチや制度に大きな違いがあることを知りました。
そこで本日は、海外と日本の発達障害支援の違いに注目し、日本が取り入れるべき視点を私の視点で書いていきます。発達障害の当事者や家族、そして支援者にとって役立つヒントになればと思います。
日本の発達障害支援の現状
法制度と支援の枠組み
日本では2005年に「発達障害者支援法」が制定され、発達障害は社会的に認知されるようになりました。教育現場では「特別支援教育」の枠組みが導入され、医療・福祉でも障害福祉サービスや就労支援が広がっています。
特に教育・福祉分野では個別支援計画が作成されるようになり、本人の特性に応じた支援を行う仕組みが存在しています。

日本の強みと課題
強み:
制度は全国に整備され、医療・福祉の利用できるサービスの種類も豊富。
課題:
個別支援計画があっても、画一的な運用や「書類上の形式」で終わってしまうことがある
家族の負担が依然として大きい
「協調性」を重視する文化の影響で、特性の強い子どもが「周囲に合わせるように」指導されがち
まだまだ理解が不十分
海外の発達障害支援の特徴
アメリカ
IDEA法に基づき、すべての子どもに教育を受ける権利が保障される
IEP(個別教育計画)が義務化され、学校は必ず子ども一人ひとりの支援計画を作成し実行する責任を負う
差別禁止を定めたADA法により、職場でも合理的配慮が徹底される
アメリカでは「権利」としての支援が強調されるのが特徴です。
ヨーロッパ
北欧では地域社会での生活を重視し、医療・教育・福祉が一体的にサポート
イギリスのSEND制度では、教育から生活まで包括的に支援する枠組みが整っている
家族への心理的支援やレスパイト(休養)支援が充実しており、家族全体の生活を支える姿勢が強い
オーストラリア
NDIS(National Disability Insurance Scheme)により、本人が使いたい支援を「選択」できる
サービス利用の決定権は当事者にあり、自己決定を最大限尊重する
日本と海外の違いを生む「文化」の背景
海外は「個人主義」
欧米やオセアニアの国々では、個人の権利や自己決定を何よりも重視します。
発達障害があっても「自分らしく生きる権利」が最優先です。学校や職場は「合わせてもらう場所」ではなく「一緒に調整していく場」となっています。
つまり、周囲が環境を変えて当事者にフィットさせる発想です。
日本は「協調性」
日本では「和を乱さないこと」「みんなと同じであること」が価値観として強く根付いています。
特別扱いは「甘やかし」と捉えられやすい
支援の現場でも「集団に合わせる努力をさせる」指導が行われがち
その結果、本人の特性に合わせた支援が形骸化することがあります。
日本が取り入れるべき視点
1. 個別支援を「形式」から「実効性」へ
日本でも個別支援計画は存在しますが、海外のように法的拘束力や実効性を強める必要があります。計画を形だけにせず、現場で継続的に見直す体制が重要です。
2. 自己決定の尊重
日本では「家族や支援者が決めてしまう」ケースが多いですが、本人が選び、本人が納得する支援が基本であるべきです。オーストラリアのNDISのように、当事者が自分で支援をデザインできる仕組みは大きな参考になります。
3. 家族支援の充実
発達障害支援は本人だけでなく、家族の負担を軽減することも欠かせません。北欧のように「家族全体を支える」発想を導入することで、長期的に安定した暮らしを実現できます。
4. 協調性を尊重しつつ、多様性を認める教育へ
日本の「協調性を大切にする文化」そのものは強みでもあります。
しかし、協調=同調ではないという視点が必要です。異なる特性を持つ人が共存できる「多様な協調性」を育むことが今後の課題です。

まとめ
海外と日本の発達障害支援の違いを整理すると、
海外:個人主義に基づき、権利や自己決定を尊重した個別支援
日本:制度は整備されているが、協調性を重視する文化の中で、個別支援が形骸化することもある
日本でも個別支援計画は導入されていますが、海外と比べると実効性や本人主体の要素が弱いのが現状です。
今後は「協調性を大切にしつつも、個人の多様性を尊重する社会」へと進化することが求められます。
発達障害支援は、制度だけではなく文化のあり方とも深く関わっています。日本が海外の良い視点を取り入れながら、日本らしい支援モデルを構築することが、これからの大きな課題といえます。