起立性調節障害 学校がある日は具合が悪く、ない日は元気

看護師 山田祥和



朝、何度声をかけてもなかなか起き上がれない子どもがいます。布団の中でぐったりしていて、顔色も優れません。学校がある日は、「頭が痛い」「気持ちが悪い」「動けない」と訴えることが多く、起きることすらままならない様子です。



けれど、そんな子どもが学校のない土日や祝日になると、朝から起きて走り回ったり、ゲームをしたり、しっかりご飯を食べたりする姿を見かけると、「本当に病気なのだろうか?」「学校が嫌だから仮病を使っているのでは?」と感じてしまう大人も少なくありません。

お父さん、お母さんの中には怠けるなと叱咤激励するご家庭もあります。

私自身も、支援者として関わる中で、最初は同じような気持ちを抱いていました。

ですが、起立性調節障害について学び、そして子どもたちと丁寧に関わり続けるうちに、その苦しさが“本人の努力ではどうにもならないもの”であることが少しずつわかってきました。

起立性調節障害は怠けではない


起立性調節障害は、自律神経のバランスが崩れることによって、特に朝の時間帯に血圧が十分に上がらず、脳に血流が届きにくくなる病気です。その結果、立ちくらみやめまい、強いだるさ、頭痛、吐き気などの症状が起き、朝起きることが非常に困難になります。

「起きなければならない」と頭では分かっていても、身体が言うことを聞いてくれない。そのため、無理に起こそうとすると、症状が悪化してしまうこともあります。また、思春期の子どもに多く見られる病気であり、成長期特有のホルモンバランス生活リズムの乱れも影響していると言われています。


学校がある日は、「早く起きなければ」「遅刻できない」「授業に出なければ」というプレッシャーが無意識のうちに心と身体を緊張させ、自律神経の不調をさらに悪化させる要因となります。あるお子さんは、「明日学校だと思うと、夜から心臓がドキドキして眠れなくなる」と話してくれました。

一方、土日や長期休暇のときには、そういったプレッシャーから解放されているため、心身がリラックスし、自然と体調も良くなることがあります。これはけっして「サボっている」「学校が嫌だから元気なふりをしている」わけではなく、安心できる環境にいることで症状が軽減しているというだけのことなのです。

つまり学校というストレス(いい意味でも悪い意味でも)から、自分ではコントロールできない自律神経やホルモンバランスに影響が出てしまうのです。気合いや根性ではどうすることも出来ず、怠惰でもないのです。

起立性調節障害 かかわり方

支援者として私たちができることは、まずは「信じること」だと感じています。

周囲から「元気そうなのにどうして学校に行けないの?」「行きたくないだけじゃないの?」といった言葉を浴びせられ続けると、子どもたちはますます自信を失い、自分のつらさを誰にも話せなくなってしまいます。


「怠けている」のではなく、「本当にできない」。そういった視点で見守ることが、何よりも本人の安心感につながります。

また、家庭や学校の理解も非常に重要です。

無理に登校させようとするのではなく、「今日はどうしたら少し楽になるかな?」「どんなサポートがあれば過ごしやすいかな?」と、本人のペースに寄り添いながら、一緒にできることを考えていく姿勢が求められます。


私自身、起立性調節障害の子どもと関わる中で、症状が良くなったり悪くなったりする波をたくさん見てきました。一進一退の日々の中で、それでも「がんばろう」とする子どもの姿に、私の方が勇気づけられることもあります。

「完璧に登校できなくてもいい」「朝から元気に過ごせなくてもいい」

その子なりのペースで、一歩ずつ前に進んでいくことを大切にしたいと思っています。

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