アルコール依存症の夫と共依存の私③
看護師 山田祥和
アルコール依存症で悩む家族の話です。
「私がいなければこの人はダメになると、本気で信じて行動してきました」

第六章:底に沈んだ夜
その年の冬、寒い日でした。
職場に一本の電話がありました。
「ご主人がバイクで事故を起こし、救急車で運ばれました」
飲んだら運転だけはしないでと言ってきましたが、飲んで電柱に突っ込んだようです。幸い誰も巻き込みませんでしたが、夫は足の骨を折りました。
病院では骨折もそうですが、痙攣発作を起こしているとのことです。(長期間飲んでいた人がやめると痙攣発作が起こることがあるそうです)
私は娘たちを保育園に迎えに行ってから、急いでタクシーで病院に向かいました。夫は私たちの苦労を知らず、眠っていました。
「生きていてよかったのか、死んでくれた方がよかったのか」
帰りはバスで帰ったのですが、そのバスの中で私は泣きました。声を殺して。
赤ちゃんを前に抱え、娘の手を握り泣きました。娘は本当に強くいつも私を守ってくれます。黙ってハンカチを差し出してくれました。
私はそれを受け取りながら、「ごめんね、ごめんね」と心の中で叫んでいました。
「もう終わりにするからね」
私は夫との離婚を決めました。夫は翌日には目を覚まし、2、3日後に足の手術があり、歩けるようになりました。
離婚を決め、役所に離婚届をもらって自分のところは記入済みで常にカバンに入れてある状態です。
仕事帰りに子どもたちを連れて面会に行っているのですが、病院での夫は、子どもたちにも優しく、私にも優しく、「もう飲まないから」と本当に反省しているようでした。娘も面会に行きたがります。
お酒が切れている状態を見るのは何年ぶりでしょうか。
離婚の話はできないままでした。娘が夫と楽しそうに話している顔を見ると心が揺らぎます。
「このままお酒がやめられれば、、、」

第七章:繰り返す飲酒
「このままお酒がやめられれば、、、」
アルコール依存症はそんなに甘くありません。
事故から3週間ほど経った後、病院から電話がありました。
「ご主人が見当たりません」
まだ長い距離は歩けないはずですが、私はわかっていました。どこで何をしているのか。
家に戻るとやはりウィスキーのボトルが既に2本空いていました。
やっぱり
柿の種と氷が散乱しおり、尿失禁もしていました。
それでも飲みながら、「おー、帰ってきたか。退院しだぞ」と強気です。
まだ治ってないから病院に戻ってと私は伝えましたが、聞き入れるはずもありません。娘に焼酎を買ってこいと小銭を投げ怒鳴り散らします。
「やめて」という私を制して、娘は「わかった、急いで買ってくるね」とお金を拾います。
娘は私を守るため、笑顔で対応します。人の顔色を見て怒らせないように生活しているのです。まだ、6歳なのに私を守り、弟も守り、自分を犠牲にしています。駄々をこねて私を困らせたことは一度もありません。
「どこまでダメな母親なんだろう」
気がついたら、近くにあった掃除機で夫を何回も何回も叩き続けていました。
娘に謝りながら、何回も、何回も