「褒める」

看護師 山田祥和


訪問看護の現場では、利用者さんと信頼関係を築くことがとても大切です。その中で、「褒める」という行為は、相手の自己肯定感を高め、前向きな気持ちを引き出す重要な役割を担います。しかし、ただ何でも褒めれば良いというわけではありません。褒め方ひとつで、相手に与える影響は大きく変わります。

1. 努力している部分を褒めることの重要性


褒めるときに意識したいのは、「本人が大切にしていること、努力していることを認めること」です。例えば、外見のかっこよさや美しさは生まれ持った要素が大きいため、それだけを褒めると表面的に感じられることがあります。それよりも、利用者さんが日々努力していること意識して取り組んでいることに焦点を当てると、より深い共感と信頼が生まれます。

たとえば、
清潔さを保つことに気を配っている方なら「いつも身だしなみに気をつけていて素敵ですね」
インテリアにこだわっている方なら「いつもお部屋も綺麗で気持ちがいいですね」
リハビリを頑張っている方なら「少しずつ動きがスムーズになっていますね。頑張りが実っていますね」

このように、努力の過程を具体的に褒めることで、相手は「自分の頑張りが認められた」と実感できます。

2. 頑張りを正当に評価する


学歴や資格なども同様です。たとえ高い学歴があっても、努力の過程が伴わなければ褒めるポイントにはなりません。しかし、本人が苦労しながら得た学歴や資格であれば、その努力をしっかり認めることが大切です。

褒めるべきなのは「結果」ではなく「プロセス」です。頑張ったこと、挑戦し続けたこと、少しずつでも前進したことに目を向けることが、心に響く褒め方です。

それは子どもでも大人でも同じ原理です。

3. 自尊心を育む褒め方


褒めることは単なる気分を良くする手段ではありません。適切に褒めることで、利用者さんの自尊心を育み、生活に前向きな変化をもたらす力があります。
「こんなに頑張っているあなたなら、きっとこれからも大丈夫。」
「少しずつでも前に進んでいることが素晴らしいですね。」

こうした言葉は、相手に自信を与え、より良い生活を送るモチベーションにつながります。

4. むやみに褒めることのリスク


一方で、根拠のない褒め言葉や過剰なお世辞は逆効果になることもあります。「本当にそう思っているの?」と不信感を抱かれたり、褒められること自体がプレッシャーになったりすることもあります。

そのため、褒めるときは次の3つのポイントを意識します。
1. 具体的に褒める:「すごいですね」ではなく、「毎日少しずつ取り組んでいて素晴らしいですね」と言う。
2. 努力の過程を認める:結果ではなく、過程に注目する。
3. 相手の価値観を尊重する:相手が大切にしていることを褒める。

5. まとめ


訪問看護において褒めることは、利用者さんの自己肯定感を高め、より良い生活をサポートする重要な役割を果たします。ただし、褒めるときは「努力している部分」に焦点を当てることが大切です。

無理に褒めるのではなく、相手の頑張りや努力のプロセスを認めること。これが、利用者さんの自尊心を育み、より前向きな毎日を支える秘訣です。

訪問看護の現場で、心からの言葉を届けることで、より信頼関係を深めていきたいです。

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