防げる孤独死 訪問看護の現場で見えてきた助かったケースと間に合わなかったケース

看護師 山田瑞枝

先日、新聞で「防げる孤独死」という言葉を目にしました。
その言葉を見たとき、これまで訪問看護をしてきた中で出会った顔や場面が、次々と浮かびました。

私はこれまで、訪問看護の現場で孤独死を数例、実際に目の当たりにしてきました。同時に、倒れているところを発見し、救急搬送され、命が助かったケースにも何度か関わってきました。

この二つの違いは、決して偶然や運だけではありませんでした。

私は現在、精神科の訪問看護を行なっていますが、それ以前は一般科の訪問看護に従事してきました。
本日は、訪問看護の現場で見えてきた孤独死の背景と、防ぐことができたケースに共通していた要素についてお伝えします。

孤独死は高齢者だけの問題ではない


孤独死という言葉から、多くの人は高齢者の一人暮らしを想像するかもしれません。
しかし実際の現場では、年齢に関係なく孤独死は起こっています。

精神疾患を抱えている人、身体の不調と心の不調が重なっている人、家族はいるものの関係が途切れている人。
こうした背景を持つ人たちが、社会との接点を少しずつ失い、誰にも気づかれない状態になっていくことがあります。

精神科訪問看護の現場では、意欲の低下や外出困難、受診や服薬の中断、人との関わりを避ける状態が重なることが少なくありません。
その結果、体調の変化があっても誰にも伝わらず、孤独死に至ってしまうケースがあります。

実際に経験した孤独死の現場


訪問予定の日に訪問し、インターホンを鳴らしても反応がなく、電話もつながらない。
いつもは必ず連絡がある人。

おかしい、、、

家族もいない、、、

警察とともに室内に入ると、すでに亡くなっていたことが確認されました。そんな経験もしています。

その方は、直前まで大きな不調を訴えていませんでした。
むしろ「迷惑をかけたくない」「自分で何とかする」と話されることが多かった印象があります。

今振り返っても、「もっと早く気づけたのではないか」という思いが残ります。
孤独死は、ある日突然起きた出来事のように見えて、実は少しずつ積み重なった結果でもあります。

命が助かったケースに共通していたこと


一方で、孤独死に至らず、命が助かったケースもありました。

連絡が取れない時間帯がいつもと違っていた、
訪問時の表情や動きが明らかに普段と違っていた、
何となく違和感があり、その感覚をスタッフ同士で共有できていました。

こうした小さなきっかけから安否確認を行い、倒れているところを発見し、救急搬送につながったケースがあります。

ここで大きかったのは、日頃から人との関わりが途切れていなかったことと、異変を見逃さない視点がチームにあったことでした。

防げる孤独死に見られる共通点


防ぐことができたケースを振り返ると、いくつかの共通点が見えてきます。

まず、定期的に誰かと関わる仕組みがありました。
毎日でなくても、週に一度、月に数回でも、誰かが生活を気にかけている状態がありました。

次に、小さな変化を「気のせい」で終わらせていませんでした。
食事量の変化、声のトーン、部屋の様子、返信の仕方。
そうした違和感を言葉にし、共有できていました。

そして、本人が助けを求めなくても見守る体制がありました。
多くの人は、本当に苦しいときほど「助けて」と言えなくなります。
だからこそ、本人任せにしない支援が重要になります。

孤独死を防ぐためにできること


孤独死を完全になくすことは簡単ではありません。
しかし、減らすことは可能です。

定期的な訪問や連絡があること。
体調や生活の変化に気づく人がいること。
困ったときにつながれる支援先があること。

訪問看護や訪問診療、地域の支援者とのつながりは、命を守る役割を果たします。

「まだ大丈夫」「そのうち相談しよう」
そう思っている間に、状況が悪化してしまうこともあります。

早すぎる相談はありません。

孤独死は個人の責任ではない


孤独死は、本人の弱さや努力不足の結果ではありません。
社会とのつながりが薄れ、声を上げにくくなり、支援につながる前に限界を迎えてしまう。
それは誰にでも起こりうることです。

だからこそ、孤独死は個人の問題ではなく、社会全体で向き合う課題だと感じています。


訪問看護が果たす役割


訪問看護は、医療行為を行うだけの仕事ではありません。
今日も生きていることを確認し、変化に気づき、つながりを保ち続ける仕事です。

その積み重ねが、防げる孤独死を防ぐ力になります。

もし今、一人で不安を抱えている人がいたら。
もし、最近誰とも話していないと感じる人がいたら。

つながることで、守れる命があります。

私も何かチカラになれればと思って、日々看護しています。

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