不登校の子どもが学年が上がるときに抱える気持ち〜新学期に揺れるこころとどう向き合うか〜
看護師 山田祥和
中々学校に行けないお子さんのいる家庭で、新学期が始まるこの時期は、一番揺れる時期かもしれません。
不安やプレッシャー、そこからの怒りや落ち込み、受け止める家族も揺れてしまいます。
その子どもの揺れてしまう気持ちが、少しでも理解できれば、揺れは小さくなるかもしれません。
前回は小学校から中学校に上がる時の気持ちについて考えてみましたが、本日は学年が上がる時の気持ちについて考えてみたいと思います。
(前回の記事と内容が被るかもしれません)
新学期は「期待」と「不安」が同時に高まる時期
新しい学年が始まると、「今度こそ行けるかもしれない」という「期待」が生まれます。これは子ども自身の中にも確かにある前向きな気持ちです。
しかし同時に、「また行けなかったらどうしよう」「同じことの繰り返しになるのではないか」という不安も強くなります。過去にうまくいかなかった経験があるほど、この不安は現実味を帯びて感じられます。
つまり新学期は、前向きな気持ちがあるからこそ、うまくいかなかったときのダメージも大きくなりやすい時期なのです。何年か学校に行けないことが続いていると不安も強くなります。
「去年の自分」との比較が子どもを苦しめる
学年が上がると、子どもは無意識に「去年の自分」と比較します。
「結局行けなかった」「何も変わっていない」と感じることで、自分を責める気持ちが強くなります。特に真面目な子ほど、「今年こそは」という思いがあった分だけ、うまくいかない現実に強い落ち込みを感じます。
周囲から見れば「まだ始まったばかり」と思えるかもしれませんが、子どもにとってはすでに「またダメかもしれない」という感覚に包まれていることも少なくありません。
この時期は「大丈夫かな?」と相談を受けることも多いです。

行けない理由が「分からない」ことが苦しさを深める
「どうして行けないの?」と聞かれることは多いですが、子ども自身も理由をうまく説明できないことがほとんどです。
朝になると体が動かない、気持ち悪くなる、涙が出る。頭では「行った方がいい」と分かっていても、体や気持ちがついていかない状態です。
このとき子どもは、「自分でも分からないことを説明しなければならない」という苦しさを感じています。そして説明できないことで、「怠けていると思われるのではないか」と不安になり、さらに追い詰められてしまいます。
自分自身もやり場のない気持ちでいっぱいです。
「みんな普通にできている」という感覚が孤独を強める
新学期は、周囲との違いを強く感じやすい時期でもあります。
同じ年齢の子どもたちが当たり前のように登校している姿を見ると、「自分だけができていない」と感じてしまいます。本当は同じように学校生活を送りたい気持ちがあるからこそ、その距離がより強く意識されます。
焦ります。
その結果、「自分はダメなんだ」「どこかおかしいのではないか」といった自己否定につながりやすくなります。
他人との比較は焦りを生みます。
親の不安や焦りも自然なもの
お子さんが揺れているとき、親もまた揺れます。
「このままで大丈夫なのか」「将来どうなるのか」「どう関わればいいのか分からない」こうした不安や焦りを感じるのは、とても自然なことです。
ただ、その気持ちが強くなりすぎると、「なんとかしなければ」という思いが先に立ち、言葉や態度に表れてしまうことがあります。
心配なだけに、子どもに強く当たってしまうのも当然です。
親の関わり方が子どもの安心感を左右する
この時期に大切なのは、「行かせること」よりも「安心できる状態をつくること」です。
「行けるなら行った方がいい」という考えは間違いではありませんが、それを強く伝えすぎると、子どもにとってはプレッシャーになります。
むしろ、「行けなくても大丈夫」「あなたのペースでいい」というメッセージを伝えることが、子どもの安心感につながります。
安心できる環境があって初めて、子どもは「少しやってみようかな」と思えるようになります。

小さな変化を一緒に見つけていくことが大切
大きな変化を求めるのではなく、小さな変化に目を向けることが重要です。
朝起きられた、少し会話ができた、外に出ることができた。そうした一つひとつを「できたこと」として共有していくことで、子どもは少しずつ自信を取り戻していきます。
逆に、「まだできていないこと」に焦点を当て続けると、子どもはさらに自信を失ってしまいます。
親も「完璧でなくていい」と考えることが大切
親として「正しい関わりをしなければ」と思うほど、苦しくなってしまうことがあります。
しかし実際には、完璧な対応は必要ありません。迷いながらでも、子どもの気持ちを理解しようとする姿勢そのものが、子どもにとって大きな支えになります。
親自身が少し肩の力を抜くことで、家庭全体の空気も落ち着き、子どもも安心しやすくなります。
新学期は「結果」ではなく「過程」を見る時期
新学期というと、「行けるかどうか」という結果に目が向きがちです。
しかし本当に大切なのは、その子どもがどのような気持ちで日々を過ごしているか、その揺れの中で何を感じているかという過程です。
うまくいかない日があっても、それは後退ではありません。その揺れの中にこそ、次につながるヒントが含まれています。
新学期は、子どもにとっても親にとっても、決して楽な時期ではありません。
それでも、気持ちを理解しようとする関わりが積み重なることで、揺れは少しずつ穏やかになっていきます。
そしてその先に、その子なりのタイミングでの一歩が生まれていきます。
いつも書きますが、学校に行くことがすべてではなく、健康でいることの方が大切です。
いつの間にか学校に行けるようになった子を、私はたくさんみてきました。

