不安障害と訪問看護 〜安心を届けるもう一つのかたち〜
看護師 山田祥和
「なんだかわからないけど、ものすごく不安」「家族もいるのに孤独感を感じる。寂しい」「もしかして、何か重大な病気なんじゃないか」「人と会うのが怖い」「このままでは将来飢え死にするかもしれない」
不安障害とは、「過剰な不安や心配が続き、日常生活に支障をきたす精神的な状態」を指す総称です。
誰しも不安を感じることはありますが、不安障害の場合、その不安が強く長く続きすぎてしまい、本人のコントロールが効かなくなってしまいます。
性格の心配性という域を超えて、病気です。従って治療可能です。
そんな不安障害を抱える方々の生活を支えるひとつの方法が、訪問看護です。今回は、不安障害と訪問看護の関わりについて、現場での実感も交えながらお伝えしていきます。

不安は「病気」?
「心配性なだけでは?」と思われるかもしれません。でも、不安障害はれっきとした医療の対象であり、放っておくと生活の幅が狭まり、引きこもりやうつ状態、身体症状(めまい、吐き気、動悸など)を引き起こすことがあります。
不安は誰にでもありますが、生活に支障をきたすような過度な不安は病気です。
実際、不安障害の方の多くは「病院に行くのも怖い」「薬を飲むのが不安」といった葛藤を抱えながら、どうにか日々をやり過ごしています。そうした方にとって、「家にいながら支援が受けられる」訪問看護は、大きな安心につながります。
訪問看護ってどんなことをするの?
訪問看護は、看護師や作業療法士などの専門職が自宅に訪問し、生活面や健康面、精神面での支援、相談を行います。
不安障害の方の場合、主な支援内容は以下のようなものがあります。
• 不安の傾聴:理由のない不安に耳を傾け、「それは症状だよ」と伝えるだけでも、本人はほっとされることが多いです。
「よき相談相手」になります。
• 服薬管理:薬への不安が強い方には、飲み方の確認や副作用の説明を丁寧に行い、安心して服用できるよう支援します。
• 外出練習:医師の指示のもと、スモールステップで一人では不安な場面に同行することも可能です。
• 行動の見守り:生活リズムが崩れやすいため、朝の声かけやスケジュール作成もサポートします。
訪問看護師は「病気を治す人」というより、「安心を届ける人」なのかもしれません。
訪問看護がもたらす“安心の居場所”
「人と話すことすら不安だったのに、週に1回の看護師さんの訪問が楽しみになった」という声も聞きます。
これは、実際に不安障害を抱える利用者さんから聞いた言葉です。訪問看護は、単に医療や生活支援を提供するだけでなく、「この人は自分の味方だ」と感じられる関係性を育てる時間でもあります。
不安障害の方は「こんなことで相談していいのかな」「迷惑かな」「また心配しすぎって思われるかも」と、人に頼ることすら躊躇してしまいます。だからこそ、否定せず、焦らせず、同じ目線で関われる存在があるといいです。
家族の理解も一緒に育てていく
不安障害は目に見える病気ではないため、家族の理解が得られにくいこともあります。「ただの甘えじゃないの?」「心配しすぎじゃない?」といった言葉が、本人をさらに苦しめてしまうこともあります。
訪問看護では、家族への説明や相談対応も行います。「こういう症状にはこう対応するといいですよ」「本人なりに頑張っていることがあります」といった情報を伝えることで、家庭内の雰囲気が少しずつ変わっていくこともあります。

不安障害は治るか治らないか
不安障害はある日突然なってしまうこともありますが、ある日突然よくなることもあります。
「何だがわからないけどよくなった」というケースを私は過去何例も見てきています。
「不安だ不安だ」と一日に何回もお電話があった方が、何をしたわけでもないのに、ある日を境に「不安がなくなりました」というのです。本人でも理由はわからないと言います。
不安を「一人で抱えない」
よくなることもありますので、一人で悩まないのが一番です。
孤独は不安を大きくします。自分の中だけで考えがぐるぐる回ってしまい、間違った方向に考えを持っていき、その結果、余計に不安が増強します。
解決しないかもしれませんが、不安を話すことも大切です。話すことで考えがまとまり、客観的な意見もでます。
「家にいても、ひとりじゃない」と思える時間もあることが、回復の大きな一歩になります。
不安障害はきつい病気です。一人で悩まずに相談できる環境があるといいです。