不安障害の種類とその対処法 訪問看護師による支援の現場からみた対処の一例

看護師 山田祥和

不安障害とは


私たちの訪問看護の利用者さんの中にも、不安障害を抱えた方は多くいらっしゃいます。

不安障害は、強い不安や恐怖が長期間続き、生活や社会活動に影響を与える精神疾患です。単なるこころや気持ちの問題ではなく、身体症状(動悸・息切れ・発汗)や行動の制限が伴うため、非常に苦しい疾患です。

さらには周囲の理解も得られにくいため、孤独感、孤立感も伴います。

現場でよくみる不安障害の種類とその対処法

1. パニック障害とは


定義
理由もなく突然、激しい動悸や息苦しさ、めまいなどを伴うパニック発作が繰り返し起こる疾患です。「また発作が起きるのでは」という予期不安で外出や活動が制限されることもあります。

現場の事例
突然の発作で外出が怖くなり、通院すら困難になっている方もいます。訪問看護では発作予防のための呼吸法や、発作時の考え方などその人に合った対処法を一緒に考えます。

支援ポイント
発作時に使える腹式呼吸や数息法の練習
発作の兆候を本人が把握できるよう記録ノートを作成
玄関先や庭など安全な外出の段階的練習
スモールステップで次は公園まで次はコンビニまで


2. 社交不安障害(SAD)とは


定義
人前で話す、食事する、初対面の人と会うなどの場面で強い不安や緊張を感じ、回避してしまう精神疾患です。過度な恥ずかしさや失敗への恐れが特徴です。

現場の事例
「人と対面するのが怖い」といった場合、訪問看護では一対一で始められるメリットがあります。雑談から始め、徐々に会話のレベルを上げて対人スキルの向上を図っていきます。
場合によっては、絵を描いたり、音楽を聴いたりと好きなことを一緒に行うことから始めます。

支援ポイント
安全な環境での模擬会話トレーニング
認知行動療法を応用し、「失敗しても大丈夫」という認識作り
必要時は主治医と連携して薬物療法も併用

3. 全般性不安障害(GAD)


定義
特定のきっかけがなく、日常のささいな出来事にも過剰な不安や心配が半年以上続く状態です。

現場の事例
「災害が起きたらどうしよう」「家族が事故にあったら」と常に心配が尽きない方もいます。訪問時は一緒にニュースとの距離の取り方や睡眠環境の改善を進めることもあります。

支援ポイント
希望があれば、マインドフルネス呼吸法で“今”に集中する
不安を書き出し、根拠を検証する思考整理ノートの活用
睡眠・食事リズムの安定化支援

4. 強迫性障害(OCD)


定義
不合理とわかっていても、確認や洗浄などの強迫行為を繰り返してしまう疾患です。

現場の事例
手洗いを1時間以上繰り返す人もいます。訪問看護時には曝露反応妨害法(ERP)を取り入れ、手を洗おうとしても看護師がストップして、手洗い回数を減らす練習を行うこともあります。

支援ポイント
強迫行為を減らす小さな目標設定
行為前後の感情変化を記録し、達成感を共有
家族にも過剰な協力をしないサポートの仕方を説明


5. 特定の恐怖症


定義
高所、閉所、虫、飛行機など特定の対象や状況に対し、強い恐怖や回避行動を示す状態です。

現場の事例
閉所恐怖症の方の場合、エレベーターに近づくだけで動悸があり、日常生活に支障をきたすこともあります。訪問時に写真から始め、徐々に現地での練習を重ねました。
大丈夫という安心を落とし込むように支援していきます。

支援ポイント
段階的曝露(写真 → 動画 → 実際の現場)
恐怖時の呼吸法とリラクゼーション法
ポジティブな成功体験の積み重ね

不安障害の支援で私たちが大切にしていること


訪問看護師として心がけているのは、「安心できる人間関係の中で小さな成功を積み重ねる」ことです。

不安障害の症状はすぐには消えませんが、日常生活の中で少しずつ挑戦と休息を繰り返すことで改善します。

気がつけば「何だが良くなっていた」こともよくあります。

不安障害の自己対処法(訪問看護時にも確認)

1. 規則正しい生活習慣(睡眠・食事・運動)
2. 呼吸法・瞑想で自律神経を整える
3. 思考の書き換え(根拠を検証して不安を減らす)
4. 無理のない外出練習(段階的に距離や時間を延ばす)

まとめ


訪問看護では、不安障害を抱える方が「安心して生活できる環境」を整えながら、少しずつ自信を取り戻せるよう一緒に行動して支援します。

パニック障害・社交不安障害・全般性不安障害など、その人に応じた支援方法を組み合わせることで、回復への道は必ず開けます。

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