アルコール依存症と発達障害と訪問看護 苦痛から逃れるために飲む

看護師 山田祥和

アルコール依存症の方と日々関わっていると、お酒が好きで飲んでいる人は実は多くありません。

快楽目的ではなく、圧倒的に多いのは、精神的な苦痛から逃れるために飲んでいるケースです。

不安、孤独、緊張、人間関係の疲弊、過去のつらい経験、社会での生きづらさ。
これらに押しつぶされそうになり、アルコールが唯一の逃げ場として使われてしまう状況がよく見られます。

依存症は娯楽としての飲酒の延長ではなく、精神的苦痛に耐えるための方法がアルコールになってしまった状態と捉えた方が実態に近いと感じています。

訪問看護師として生活の場へ入ると、この現実が非常に強く伝わってきます。



 

苦痛から逃れるための飲酒


依存症の方からよく聞く言葉があります。

飲まないと心が苦しくなる
静かな時間が怖い
不安が押し寄せてくる

これは意思の弱さではなく、精神的な痛み止めとして飲酒が使われている状態です。

本人は飲んではいけないと理解しており、やめたいという思いを何度も口にします。
それでも、胸が締めつけられるような不安や孤独に耐えられなくなり、アルコールに頼らざるを得ない状況が繰り返されるのです。

訪問看護の役割は、単に飲酒をやめさせることではありません。
その人が抱えている苦痛の正体を一緒に探し、別の対処方法を探していくことにあります。

 

背景にある深い孤独


依存症の根底には、多くの場合、深い孤独があります。

家族との関係がこじれ、友人関係は途切れがちで、本音を誰にも言えないまま生活している人が少なくありません。

誰にも話せない
理解されない
分かってほしいのに言葉にできない

この孤独が依存症を悪化させる大きな要因になります。

訪問看護では、自責や批判をせず、安心して話せる関係をつくることを最優先にしています。
飲んでしまった日でも、正直に話せる関係が回復にとって非常に重要です。

 

発達障害と依存症の深い関係


実際の訪問では、発達障害とアルコール依存症の両方を抱える方に出会うことが少なくありません。
これは決して珍しい組み合わせではなく、特性が依存形成に強く関わっていると感じます。

対人関係の苦手さと孤独


発達障害の方は、距離感の掴みにくさ、相手の意図を読む難しさ、刺激に敏感で疲れやすい特性を持つ場合があります。
このため、対人関係で摩擦が起こりやすく、孤独を抱えやすい傾向があります。

孤独や緊張のストレスが強く、精神的な痛み止めとしてアルコールを使用しやすくなる場合があります。

ASD特有のこだわりの強さ


ASDの方は、行動のパターン化や習慣化が強く、毎日飲むという行動が儀式のように固定化しやすい傾向があります。
これが依存症を進行させる一因となります。

ADHDの衝動性


ADHDの方は、思い立ったらすぐ行動してしまう衝動性があり、飲み始めると止まらないという状態に陥りやすいです。
その結果、依存に発展するケースが少なくありません。

発達特性を理解したうえで支援を組み立てることは、訪問看護において非常に重要です。



 

回復の鍵は人とのつながり


依存症支援の中で最も重要だと感じるのは、孤独を減らすことです。
人は孤独なほどアルコールに依存しやすくなります。

そこで大きな支えになるのが、自助グループとのつながりです。

AA
断酒会
依存症回復コミュニティ
ピアサポートグループ

同じ経験を持つ仲間との出会いは、自分だけではないという安心感につながり、飲酒欲求を弱める力にもなります。

訪問看護では、参加への同行、情報提供、継続参加への支援などを行い、孤立の改善に力を入れています。

 

訪問看護の支援の柱


依存症の回復は直線的ではありません。
良い日もあれば、飲んでしまう日もあります。

そのたびに本人は深く落ち込み、自分を責めがちです。

訪問看護では、再飲酒も回復のプロセスの一部として扱い、責めるのではなく、次にどうするかを一緒に考える姿勢を大切にしています。

支援の中心は以下の通りです。

苦痛への理解と対処法の共有
孤独を和らげる関係づくり
自助グループとのつながり支援
発達特性に合わせた生活支援


依存症は孤独と苦痛の中で育ちますが、回復は人とのつながりの中で育ちます

訪問看護は、そのつながりを取り戻すための橋渡し役です。

 

まとめ

アルコール依存症の多くは、「快楽のためではなく、精神的な苦痛から逃れるため」に飲んでいるという現実があります。
発達障害が背景にあると対人関係の難しさやこだわりの強さから孤独を抱えやすく、依存症へ移行しやすい状態になります。

訪問看護の役割は、苦痛に寄り添い、孤独を和らげ、仲間とのつながりを取り戻すことです。
そして最も大切なのは、本人が一人ではないと実感できる関わりであると考えています。

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