精神科訪問看護は「担当制」がいいのか「チーム制」がいいのか
看護師 山田祥和
「訪問看護は担当制(受け持ち制)ですか?それともチーム制(ローテンション制)ですか?」
と利用者さんや家族、別の訪問看護ステーションから聞かれることがあります。
両方を経験した私が考えるベストな体制
私たちは、基本的に担当制を採用しています。理由はシンプルで、信頼関係を築きやすく、良き相談相手になれること、いろんな看護師がくることによる利用者さんの負担が少ないこと、また利用者さんと看護師が一緒に喜びを分かち合えること、などなど。
継続的にみれますので、治療効果や利用者さんの変化にも気づきやすいです。担当ですので看護の方向性も統一できます。
しかし、どちらの体制にもメリットとデメリットはあります。
今回は、担当制とチーム制の特徴を比較しながら、どちらがいいのかを考えていきます。
担当制とは?

担当制とは、特定の看護師が利用者さんを受け持ち、継続的に訪問を行う仕組みです。
精神科訪問看護においては、この「継続性」が非常に重要な意味を持ちます。
◎ 担当制のメリット
① 信頼関係が築きやすく、治療的に関われる
精神科訪問看護の目的は、症状の安定や再発予防、生活の質の向上です。そのためには、利用者さんが「安心して話せる関係」を築くことが何よりも大切です。毎回同じスタッフが訪問することで、安心感が高まり、利用者さんは自分の思いや不安を話しやすくなります。
② 一緒に方向性を考え、喜びを分かち合える
「こうしていこう」「次はこれをやってみよう」と、利用者さんと目標を共有しながら進められます。これは治療的な介入にもつながり、訪問看護師としてのやりがいを感じる瞬間でもあります。「就職できた、学校に行けるようになった」という報告を聞くと一緒に飛び上がって喜びます。
③ 主治医や関係機関との連携がスムーズ
医師や支援機関も基本的には「担当制」を取っています。そのため、担当者が決まっていることで、情報共有や相談がスムーズになり、治療方針の一貫性を保ちやすくなります。
× 担当制のデメリット
① 技量による差が出る
担当者のスキルや経験、知識によって、支援の質に差が出る可能性があります。教育やチーム内のサポートが欠かせません。
② 担当者の負担が大きい
特定の利用者さんに深く関わる分、責任感や精神的負担が増すことがあります。休暇を取りにくいと感じるスタッフもいます。
③ 担当者が休みにくい・振替が難しい
担当制では、「自分が行かないと…」という思いから、休みを取りづらくなる傾向があります。また、急な体調不良や休暇時の代替訪問が難しいという問題もあります。
チーム制(ローテンション制)とは?

チーム制は、利用者さんをステーション全体で共有し、誰が訪問してもよい仕組みです。
毎回訪問するスタッフが変わるため、属人化を防ぎ、柔軟な対応が可能という特徴があります。
◎ チーム制のメリット
①柔軟な対応が可能
スタッフのシフトや体調に左右されないため、訪問ができなくなるリスクが低くなります。
②属人化を防げる
特定のスタッフに依存しないため、退職や異動があってもサービスが継続しやすい。
③複数の視点で支援できる
いろいろなスタッフが関わることで、多角的な視点から支援を検討できます。
× チーム制のデメリット
①信頼関係が築きにくい
精神科訪問看護では、安心できる人との継続的な関係が重要ですが、訪問者が頻繁に変わると利用者様が落ち着かないことがあります。
②治療方針がブレやすい
関わるスタッフが多いと、支援の方向性が統一されにくくなる場合があります。
③スタッフがやりがいを見い出せない
複数の看護師でみているため、一回の訪問看護がその場だけで終わってしまう。訪問していればいいだけになる。
私の結論
担当制(受け持ち制)、チーム制(ローテンション制)を経験した上で私が言えることは、精神科訪問看護では担当制が有効ということです。
繰り返しに成りますが、理由は明確で、精神科領域では「安心」「信頼」「一貫性」が何より重要だからです。
利用者さんの立場で考えても、いろいろな人が来て、また同じ話をするよりも、いつも同じ人が来た方が断然安心できますね。